2019年9月19日11:26作成
2020年2月12日19:31更新
授業の日時、場所
- 月曜日1時限目
- 2103教室
教科書
この授業は次の教科書に沿って進めます。特に演習は教科書中の演習問題を中心に行います。
微分積分学講義 野村隆昭 著 共立出版
授業の進め方、演習について
- 毎回授業の最初に演習をします。
- 前回の授業のときにそれぞれの演習問題の解答者を指名しておきます。指名された人は授業時間が始まるまでに黒板に解答を書いておいてください。教科書の巻末にある解答を写すのではなく、自分の理解を反映して自身の言葉で書いてください。それが自分のためにもクラスメートのためにも大切です。
- 黒板の解答に沿って、理解すべき点や解答で書くべきことを私が説明します。なるべくきちんとした解答が黒板に残るように朱筆を加えますが、説明の方もよく聞いてください。
- なお、再履修の方は学期半ばまで履修者名簿に名前がないため、こちらから指名するのは難しいかもしれません。積極的に自分から名乗り出て演習を解くようにしてください。
- 続いて講義を行います。講義では
- 基本的な概念 (定義) の説明。
- それらの概念の満たす性質 (命題、定理など)。
- それらの性質を使って計算する方法 (例題) の解説。
についてお話しします。ときどき命題や定理の証明もしますが、それは内容をよりよく理解して使えるようになってもらうためで、証明を覚える必要は特にありません。
- 最後に次回の演習の解答者を決めます。基本的にはこちらで指名します。演習では主に教科書の問や章末問題を解いてもらいます。
- いうまでもなく数学は自分で考えて練習問題を解くことで理解していく科目です。毎回の練習問題は解答者だけでなく履修者全員の宿題です。1時間やそこらで解ける量ですから、必ず授業があったその日のうちに解いて、習った内容を理解しておきましょう。一人では解けないときには皆で相談し、助け合って問題を解くことも大切な演習の目的です。
授業内容
以下はあくまでも予定であり,諸般の事情により変更になることがあります.
10月7日 の距離,連続関数
の内積
とノルム- .
- Pythagorasの定理: のとき,
- Cauchy-Schwarzの不等式 (補題6.3):
- 命題6.2: はノルムの公理を満たす.特に三角不等式が大事.
の位相
- 部分集合 の内点,外点,境界点,境界点の集合 と閉包
- の開および閉部分集合
- 内の曲線
- が連結とは,, ,
; 曲線 s.t. ,
となること.
- 関数 が で に収束:
, s.t. , (, ).
演習問題
問題1 は開集合であることを示せ.
問題2 は閉集合であることを示せ.
問題3 は開集合でも閉集合でもないことを示せ.
問題4 次のの部分集合の境界点の集合を求めよ.
(1)問題2の.
(2)問題3の.
問題5 教科書p.125の問題6.6.
10月14日 体育の日
10月16日(水曜日!)偏微分と全微分
2.1. 偏微分
定義6.7 がで連続
.
定義 ;開集合, ; 関数,.
に対して,方向微分
が存在するとき,はで方向微分可能という.
特に
をのでのについての(resp. についての) 偏微分という.
2.2. 全微分
定義6.15. がで全微分可能
s.t.
s.t. , .
このとき, .
定義6.18. がで級
はで偏微分可能で,, はで連続.
定理6.19. 級なら全微分可能.
2.3. 演習問題
問題6.9, 6.20, 6.27.
10月21日 Jacobi 行列と連鎖律
3.1. Jacobi行列(6.6節)
- 偏微分可能な関数が与える写像
のJacobi行列
定理6.34 , ; 開集合., ; 級関数,がを満たすとき,
- 例:極座標, , (, ).
3.2. 演習問題
問題3.1. のについての微分を求めよ.
(1) , , .
(2) , , .
(3) , , .
(4) , , .
問題3.2. , に対するJacobi行列を求めよ.
10月28日 Taylor の定理
4.1. 高階偏導関数(6.4節)
- 小テスト.
- , などと書く.
- 級関数,級関数の定義.
定理6.31. ; 開部分集合.関数が級なら.
4.2. Taylorの定理
Taylorの定理6.51. が級関数のとき,あるに対して
4.3. 演習問題
教科書の問題6.28, 37, 38, 39, 41.
問題4.1. 次の関数のの周りでのTaylor展開を3次の項まで求めよ.
11月4日 文化の日振替休日
11月11日 二次形式
5.1. 二次形式
- 2変数二次形式. この行列の性質によって挙動が決まる.
スペクトル定理 (i) の特性多項式は実根, を持つ.
(ii)直交行列 (i.e. )があって
5.2. 二次形式の極値
命題 2変数二次形式について
- 正定値: かつ ( )のとき,はで極小値.
- 負定値: かつ (, )のとき,はで極大値.
- 不定値: ()のとき,はの鞍点.
5.3. 演習問題
問題5.1. の直交対角化を求めよ.
11月18日 陰関数の定理
- 小テスト
- 中間テストの連絡
6. 2変数関数の極値のための十分条件
命題6.58. を級関数とする.がで極値を取るならば,.
- のHesse行列をと定義.
定理6.67. 級関数がを満たすとする.
(1) のとき,次の2つの可能性がある:
- ならはで極小値を取る.
- ならはで極大値を取る.
6.2. 陰関数
陰関数定理6.73. ; 級関数,かつとする.
(i) , ; 級関数 s.t. かつ.
(ii)そのとき.
6.3. 演習問題
教科書p.150の問題6.71の(1), (3), (5), p.154の問題6.78.
11月25日 条件付き極値
- 小テスト
7.1. 曲線の特異点(6.11節)
- ; 級関数に対し,は曲線.
がの特異点 .
復習:の非特異点での接線の方程式は. - 特異点の例
- が非可逆(尖点,cusp).
- が不定値(結節点,node).
- が負定値(孤立点,isolated point).
7.2. 条件付き極値(6.12節)
- , ; 級関数.をに制限したものの極値を求めたい.
定理6.94+ , を級関数とする.
(i) のへの制限が,の非特異点で極値を取る. , ().
(ii) (i)の条件に加えて
が正(負)ならば,はで極小値(極大値)を取る.
7.3. 演習問題
問題7.1. 次のの陰関数の極値を求めよ.
(1) .
(2) .
(3) .
12月2日 中間テスト
12月9日 矩形上の重積分
9.1. 矩形上の重積分(7.1節)
- ; 矩形.区間の分割
の直積をの分割という.
- ; 有界関数. ; の分割,, (, ).
定義7.2. , が一致するとき,は上で積分可能,その値を
と書く.
Darbouxの定理7.4. が上で積分可能ならば
特に
定理7.7. が連続ならは上で積分可能.
9.2. 面積の定義(7.2節)
- ; 部分集合の特性関数 (characteristic function):
定義7.12. ; 有界集合. s.t. .
が上で積分可能なとき:
は面積確定 (measurable)であるといい,
をの面積 (area)という.
- 境界が連続曲線であっても面積確定とは限らない(Jordan曲線など).
9.3. 演習問題
教科書p.178の問題7.11 (1), (3), (5), p.181の問題7.16.
12月16日 重積分と累次積分
10.1. 重積分(7.3節)
定義7.17. ; 面積確定集合. ; 有界関数.
が上で積分可能 (integrable)
; 矩形 s.t. は上で積分可能.そのとき
と書く.
定理7.19. ; 面積確定, ; 連続関数 は上で積分可能.
定理7.20 (重積分の基本性質). ; 面積確定閉集合,, ; 連続
(1)線形性:
(2)正値性:
(3)加法性:かつのとき
10.2. 累次積分
定理7.21. 連続関数, が, ()を満たすとき,
を縦線集合 (ordinate set)という.任意の連続関数は上で積分可能で,
10.3. 演習問題
教科書p.187の問題7.25, p.188の問題7.27.
12月23日 変数変換と広義重積分
極限の順序交換(7.6節)
- 累次積分の順番を交換すると計算が楽になることがある.
11.1. 重積分の変数変換
定理7.34. ; 面積確定(有界閉)集合.級全単射
が, を満たすとき
(1) は面積確定.
(2) ;連続関数
- 例:2次元曲座標
11.2. 広義重積分
- ; 集合が面積確定 (measurable)
; 面積確定有界閉集合,は面積確定.
定義7.52, 7.66. ; 面積確定,;連続関数.
(i) がで(絶対)広義積分可能
面積確定有界閉集合が上に有界.
(ii)そのとき
をの上の広義積分という.
- ; 面積確定集合の近似増加列とは,
- 有界閉部分集合の増加列で
- ; 面積確定有界閉集合, s.t. を満たすもの.
定理7.56. ; の近似増加列 s.t.
が存在すれば,はで広義積分可能で,
11.3. 演習問題
教科書p.189の問題7.30, p.193の問題7.36, p.194の問題7.41, p.203の問題7.61.
1月6日 微分方程式とは
12.1. 微分方程式
- 階の(常)微分方程式 ((ordinary) differential equation)とその解.
- 初期条件 (initial condition)と初期値問題 (initial value problem)
- 正規形 (normal form)の微分方程式のみ扱う.
- 微分方程式の一般解 (general solution), 特殊解 (particular solution),(2)の特異解 (singular solution)
12.2. 一階方程式の求積法
- 求積法 (quadrature)で解ける場合:
- 変数分離形 (separable)
- 同次形 (homogeneous):変数分離形に帰着.
1月13日 成人の日
1月14日(火曜日!)線形微分方程式
13.1. 一階線形微分方程式
- 線形微分方程式 (linear differential equation)
さらにのとき,同次 (homogeneous)であるという.
- 一階線形微分方程式
の解法.
- Bernoulli方程式は一階線形微分方程式に帰着できる.
- Riccati方程式の特殊解から一般解が構成できる.
13.2. 2階同次線形方程式
- 2階の同次線形微分方程式の解空間.その基底の Wronskian による判定法.
- 定数係数の同次線形微分方程式
の解空間の基底の求め方.
1月20日 非斉次線形微分方程式
授業アンケート
14.1. 定数変化法
- 定理14.1: 同次方程式
の解がわかっているとき,(!)の解空間の基底と,非同次方程式
の一般解を求める方法.
- 定数係数のとき: のとき,, (, )の形の方程式は,形式的にを計算することで解けることがある.
1月27日 出張のため休講
2月3日 期末テスト
成績評価について
成績評価は中間、期末テストの結果および,授業中に提示するレポートの評点を総合的に判断して行います.
中間テスト
12月2日(月)の授業の時間に中間テストを行いました.
- 範囲:教科書の6章 多変数関数の微分法
- 教科書,ノートなどの持ち込みは禁止.学生証と時計を持参すること.試験中の飲食は禁止します.
- 忌引,傷病などでやむを得ず欠席する場合は試験開始時刻までに基幹教育教務係まで連絡すること.
期末テスト
2月3日 (月) の授業の時間に期末テストを行いました.
2月12日(水)から基幹教育教務係で,期末テスト答案を返却してもらっています.履修者の皆さんは3月末日までに,各自の答案を受け取りに行ってください.
- 範囲は,教科書の7章 多変数関数の積分法と,教科書には含まれていない微分方程式,12月9日から1月20日までの授業内容です.
- 教科書,ノートなどの持ち込みは禁止.学生証と時計を持参すること.試験中の飲食は禁止します.
- 忌引,傷病などでやむを得ず欠席する場合は試験開始時刻までに基幹教育教務係まで連絡すること.
- 中間テストを受験していない人は期末テストを受けることはできません.