仕事が分かった深さまで、仕事の楽しさも深くなる:漢方ソムリエ 田辺豪さん

今日は素敵な仕事人として、大和漢方センター田辺薬局の代表で、漢方ソムリエの田辺豪さんをご紹介します。

田辺さんは、以前素敵な仕事人としてご紹介したジャンボさん(大事なのは「さらけ出すこと」:鈴木憲治(ジャンボ)さん)のお友達で、ジャンボさんのラジオ番組にも出演されていました(また近日中に続編が放送されるそうです)。

で、なんか素敵な人だなと感じていたので、今回お会いできて嬉しかったです!

田辺さんのお仕事は、職業名でいうと「薬剤師」になりますが、お話を伺うと、薬を作って渡すことは仕事のほんの一部で、メインは、体や心に不調を抱えた方のお悩みを聴き、一緒に治療方針を立て、患者さんの治癒に寄り添い、伴走することのように感じました。

そして、そんなカウンセラーのようでもあり、伴走者でもある田辺さんからは、ほんわかとした癒しオーラが出ていて、1時間少しお話ししたあとには、なんだか私の心も軽くなったような(別に、体の不調を相談したわけではないんですけどね(笑))。

でも、今はそんなふうに漢方薬の薬剤師という仕事が天職のように見える田辺さんも、初めは調剤の仕事をまったく好きになれなかったと言います。

仕事を好きになれたきっかけは何だったのか? 今の仕事が楽しくないという人にもヒントになるお話だと思いますので、是非、インタビューを読んでいただけたら!

Contents

社会に出て10年間は暗黒期だった

今、田辺さんが代表をされている大和漢方センター田辺薬局は、もともとはお父様が始めたお店で、田辺さんは2代目です。

田辺さんはもともと、薬剤師という仕事にも、漢方にも特別な興味はなかったそうですが、高校時代、お父様に「薬科大学に受かったら、好きなことをしていい」と言われ、薬科大学を目指して勉強し、合格します。ただ、

薬科大学に入るということがその頃の目的だったから、薬剤師になりたかったわけでもなく、入学すると目標を見失ってしまった。

で、万年5月病みたいになっていた。

とのこと。

そして、その「特にやりたいことがない」という状態は大学3,4年生になっても変わらず、大手チェーンの調剤薬局に「とりあえず」入社します。

配属されたのは函館の店で、大きな総合病院の前にある門前薬局でした。

その頃は、1日に700人に薬を処方するような忙しさだった。

だから、一人一人と会話しているような余裕もないし、薬を売っているという感覚もなくて、「早くこの薬、持って行って」とただ押し渡す感じだった。

でも国からお金をもらうためには、一人一人の症状や会話した内容を書いて報告しないといけない。だから、薬局が閉まってから、ほとんど空想で一人一人の状況をメモしていった。

薬剤師といっても、その頃は専門家ではなくて、“薬マシーン”だったと思う。

ただそんな生活を1年半ほどしていたとき、お父様の体調が悪くなり、店を継ぐために帰ってきてほしいと言われます。

函館での仕事に特に思い入れがあったわけでもない田辺さんは、さほど深く考えず、二つ返事で実家に戻りました。

でも実際にお父様やお父様の師匠であった方から漢方について学び、店に立つようになってから、

今まで自分がしていた仕事とはまったく違う。

ということに気づいたそうです。

函館でしていたことは、ただ医者が書いた処方箋通りに薬を配合したり、袋に入れたりして渡すという仕事だった。

正確にやるとか早くこなすとか、チームワークを大切にするとか、そういうことはそこで学んだけれど、そのどれもがほとんど役に立たない、まったく違う世界だった。

僕はもちろん薬剤師の国家試験には通っているけれど、薬剤師の試験内容には漢方はまったくない。漢方は、薬剤師になった人のなかから、関心のある人が自ら勉強するものだった。

だから僕も、実家に戻ってきてから初めて漢方の勉強をはじめたようなもので、最初のうちはお客さんに質問されても、何も答えられなかった。

それに漢方薬局は、お医者さんが書いた処方箋を持ってくるものでもない。自分でお客さんの話を聴いて、症状の見立てをして、薬を選ばないといけない。最初はそれがとても難しかった。

それで、何も訊かないでくれと祈りながら、ただ必要最低限の仕事をしていた。

そして、仕事が楽しくないから、業務時間外は睡眠時間を削ってでもサーフィンに行ったり、友達とダンスパーティを開いたり、趣味に力を入れることで人生を楽しもうとしていたそうです。

仕事が分かってくると、仕事の楽しみも分かるようになってきた

ta3ただ、最初は嫌々やっていた仕事でしたが、次第にお客さんに「良くなった、ありがとう」「よく話を聴いてもらえるから、ここに来ている」など感謝の言葉をかけられるようになり、田辺さんも少しずつ、必要とされる喜びに気づいていきます。

サーフィンでも、最初、上手く波に乗れなくて、パドリングばっかりしている頃はつまらない。

でも上手になって、波に乗れたり、スピードを感じられるようになると楽しくなる。つまり、上手くなったことで、得られる体感のレベルが変わる。

結局仕事も、そういうことだったんだと思う。

最初は自分の方にも知識がないし、何も訊かないでくれという姿勢でいたけれど、それじゃあ、仕事が楽しく感じられるわけもなかった。

なるほど~。

田辺さんは、漢方の仕事を始めてから20年近く経った今も「勉強途中」と言われていましたが、それだけ真剣に今も仕事に向き合われています。そして、

「あの人には次、どう伝えよう」「どんな手紙を書こう」と思うと楽しくて、つい仕事の時間が長くなってしまうから、今は、睡眠時間を確保するために仕事をしすぎないように気を付けている。

というほど、仕事を本気で楽しんでいます。

以前、テレビで、料理が苦手だという主婦が、料理のプロのアドバイスを受ける番組を見たのですが、料理のプロの人が「家事は、次はこうしてやろう、あぁすればもっと良くなるんじゃないかと“追う”側に立てれば楽しくなる。でも、あれをやらなきゃ、これもやらなきゃと“追われる”側になるとつまらないし、キツイ」というようなことを言っていました。

これ、家事だけじゃなくて、すべての仕事。もっと言えば、仕事だけではなく自分がやろうとするすべてのことにあてはまるのかもしれませんね。

田辺さんも知識を増やし、経験を積むなかで、仕事に追われる側から、追う側に成長していたのでしょうね。

「仕事が嫌だ」「会社を辞めたい」という人の理由は様々だと思いますが、冷静に分析して、仕事に追われている感じが嫌で辞めたいと思っているのなら、まずは「仕事を追う側」に立てるくらい、経験を積み、スキルを磨こうと頑張ってみるのもいいかもしれません。

色々な人に会い、人や仕事、人生とのつきあいを見直した

ta5そんなふうに、少しずつ仕事のやりがいに気づき始めた頃、3.11の震災があります。

3.11を体験した田辺さんは、もっと人の役に立てないかと考え始め、「それまで薬関係の友人ばかりだった」という人間関係の外に飛び出してみようと思います。

そして、薬学や漢方とは関係のないセミナーなどに参加するようになります。

そこで初めて、仕事というのは食べていくため、家族を養うためだけにするものじゃない、という新しい価値観に触れた。

という田辺さんは、今まで読まなかったような本も読み始め、「心が豊かになった」と感じます。そしてそんな自分の内面の変化が、仕事にも変化として表れてきたそうです。

自分の心の状態によって、相手が話してくれることが変わってくる。

自分の心のコンディションが良ければ、相手は重要なことを話してくれる。

それがこの仕事ではとても大切だということに気づいた。

田辺さんの仕事は、先にも書いたように「お客さんの症状や悩みを聴き、一緒に治療方針を立て、その一環として薬の処方し、良い方にお客さんが変化するように伴走すること」です。

ですから、話を聴くことも大切ですが、たとえば「もうちょっと甘いものは控えた方がいい」「もっと睡眠を取った方がいい」などの、生活習慣に関するアドバイスをし、それを実行してもらうことも大事だと言います。

お客さんの多くは、実は問題がどこにあるかなんとなく分かっている。

きっともうちょっと摂生した方がいいんだろうな、とか、運動した方がいいんだろうな、とか。

でも「甘いものを食べ過ぎちゃダメですよ」と言うだけでは、お客さんも責められて辛いし、自分の心も辛くなる。

だから、色々話をしながら、「甘いものは控えめにした方がいいんだな」とお客さんにしっかり分かってもらって、「この人がそう言うんだから、やってみるか」と思ってもらうようにする。それが大事だなと思っている。

だから田辺さんは「この人がいうんだから……とやってもらえるような人に自分を成長させたいと思っている」ということでした。なんか、素敵ですよね!

そして田辺さんはこんなことも言われていました。

多くのお医者さんは、パソコンの画面を見ながら「薬出しておきますね」と言うだけだけれど、もっとお医者さんが魅力的になって、「この先生がいうんだから……」という人だらけになったら、すべての病気は治ってしまうんじゃないかって思う。

僕は育成会横浜病院の院長・長堀優先生を非常に魅力的だと思うから、必要な人には紹介しているのだけれど、素敵なお医者さんがいたら、これからも積極的にお客さんに紹介していきたいと思っている。

田辺さんには、東洋医学だからいい、西洋医学だからダメなどという決めつけはなく、「医療」全体が良くなることを心から願っている姿勢があり、それもまたいいなと思いました。

自費診療だからこその可能性

IMG_6420田辺さんの漢方薬局は、健康保険は使えず、100%自費です。

健康保険を使えないとなると、経営的には厳しいんじゃないかと思うところなのですが、田辺さんの口からは何度も「自費診療だからいい」という言葉が出てきました。

うちは100%自費だから、健康保険が効く病院や薬局よりはやはり高くなる。

でもそれを覚悟で、勇気を振り絞って、みんなうちの薬局に来てくれた人ばかり。

だから自分もその勇気に精一杯応えたいと思って接するし、ここに来るお客さんはみんな、自分の力でしっかり治したいという意志を持った人たちだからいい。

自費診療の可能性は、そうやって自分の健康に責任を持てることだと思う。

自分の力じゃないと結局病気は治らないということを理解してくれる人がもっと増えていけばいいと思う。

確かにそうですね。

保険が適用される診療や薬だと、月の自己負担分の上限があるから、たとえば30万円や50万円の薬を使っても、患者さんの負担は上限までになる。

そうなると、患者さんはそこまで深く考えず、その薬を使う。

でも、その分、健康保険のお金は減っていく。

さらに最近の30万円、50万円の新薬はほとんど外国製だから、薬の代金はほとんど国外に流れてしまう。

この構造が国力を弱めているということに、もっと多くの人が気づいてくれればいいと思う。

国力……なるほど……。
私も社労士の端くれなのですが、そんなこと、考えたこともなかったです。

国民皆保険というのは、素晴らしい制度だと思いますし、高額であっても必要な人が必要な薬を使える世の中であることは大切です。

でも、医療や薬が身近になりすぎて(特に薬はコンビニでも買える時代ですからね)、「病気は自分の力で治すもの」という根本的なことを忘れる世の中になってしまってはいけないな、と思います。

(風邪薬は、熱や鼻やのどの症状を押さえてくれるだけで、風邪を治しているのは、一人一人の“自然治癒力”ですからね。もし「え? そうなの?」と思った方がいたら、アンドルー・ワイルの「癒す心、治る力」を読んでください!……すみません、田辺さんでなく、私のおすすめ本ですが(^_^;))

で、田辺さんは、

そういう医療全体のシステムはすぐに変えられるものではないと分かっている。でも、自分がやっていることは、小さな一歩ではあると思っている。

と語られていました。

ta4今は薬剤師の国家資格に漢方の範囲はないし、漢方薬局の求人はほとんどないから、薬科大学を卒業した人に「漢方薬局の薬剤師」という選択肢はほとんど見えていないそうです。

でも、田辺さんのように家業を継いだわけではなく、自ら漢方薬局を開業した後輩もいるそうですし、田辺さんも漢方薬局を開きたいという人に指導する場を作り始めているということでした。

後輩の方は、一からのスタートだったので、最初は苦労したそうですが、3年経った今は、

目の前の一人ひとりを大切にするということに特化したら、食べるのには困らないようになった。

そうです。本当、目の前の一人ひとりを大切にするというのが、やっぱりビジネスの神髄なんでしょうね。

※後輩さんの薬局 → 松山漢方相談薬局(鶴見駅徒歩1分)

漢方の治療って?

で、漢方って何だということなのですが、

何らかの理由(ストレスや仕事のハードさ、出産など)があって、年齢に見合った理想のエネルギーが体になくなってしまった場合に、理想量を目指してエネルギーを補っていく療法。

ということでした。

西洋医学は、臓器移植とか、最近ではiPS細胞とか、「上手く機能しなくなったから、臓器ごとチェーンジ!」みたいなことができるけれど、漢方ではそういうのは無理。

漢方の考え方では、生まれたときから少しずつ成長に従ってエネルギー量は増えるけれど、一定の年齢になったら落ちていき、最後は必ず死に至る、というのが基本。

だから、根本的に病気を治すというより、現実的にその年齢で可能な理想のエネルギー量まで「補う」という考え方。

なるほど。

それで問題は解決するの?という話になりますが、解決するのです。

IMG_6417なぜなら、人間には本来自然治癒力があり、それが正常に働いていれば、病気になっても体がそれを治せるからです。

つまり漢方は「自然治癒力が年齢相応にきちんと働くようにしてあげる」ものなのです。

よく、西洋の薬は対処療法で、漢方は体質改善と言われる理由はそこにあるのでしょうね。

だから、たとえば「目の疲れが取れない」という人がいた場合、目薬を処方するのが西洋医療ですが、漢方では、目の疲れの原因は、肝臓にあるのだろうか、それとも貧血など血の巡りの問題なのだろうかと考えるのだそう。

で、原因が貧血だと分かったら、血の巡りを整える薬を処方したり、生活リズムや食生活を変えるアドバイスをするということです。面白いですね。

花粉症という一つの症状でも、色々な原因がある。

外からの刺激に激しく反応してしまう人もいれば、体の免疫作用が上手くいかなくて症状がひどくなっている人もいる。

だから、原因は「これかな?」「あれかな?」と考えられるだけ自分の中で考えて、それを一つずつ潰していくような質問をしていく。

だから、最初の問診には1時間から1時間半くらいかかることが多い。

そうなんですね。田辺さんには癒しオーラがあるので、1時間くらい話を聴いてもらえたら、それだけでちょっとストレスが軽減しそうです。

お近くの方(神奈川県大和市。大和駅から徒歩30秒)は、是非、行ってみてください。

※保険の効く漢方薬

最近、保険の効く病院で漢方薬を処方しているところも多いですが、田辺さんいわく

漢方薬は、どう使うか、選ぶプロセスが大事。その選び方が上手い先生もいれば、下手な先生もいるというのは確かだと思う。

とのこと。ただ、

合わない薬を飲んでいたら、自分で気づいてやめると思うから、合っていると思えば飲めばいいし、合わないと思ったらやめればいい、ということだと思う。

とも言われていました。自分の感覚を信じるというのは大切ですね。

組織に属さず、フリーで働くために大切なことは?

最後に田辺さんにも「フリーで働くために大切なことは何だと思いますか?」と訊いてみました。

様々なつながりを大切にすることかな。

僕の場合でいうと、卸やメーカーや同業者とのつながり。

個人でやっているようで、本当に個人でやっているわけじゃない。色々な人から情報も得ているし。

一匹狼のように見えながらも、独自のネットワークをしっかり構築することが大事じゃないかな。

確かにそうですね。

田辺さんにもたくさんのことを教えてもらいました。楽しく、心地よい時間を過ごせました。

最後は調剤室まで入らせてもらい、本当色々な写真も撮らせて頂きました。ありがとうございました♪


田辺さんが代表を務める「大和漢方センター田辺薬局」情報

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大和駅 北口 徒歩2分(小田急江ノ島線・相模鉄道本線)
住所:〒242-0021 神奈川県大和市中央2-1-21 モミヤマビル1F TEL:046-261-1380
営業時間:午前10時~午後7時 (定休日:日曜・祝日)

大和漢方センター田辺薬局のサイトはこちら
facebookページはこちら

是非、お近くの方で、なかなか治らない慢性病など抱えている方がいましたら、相談してみてください!

近くでない方は、「各都道府県に良い先生はたくさんいるはずだから、やはり身近な人に相談してみるのがいいと思いますよ」とのこと(なんて欲がない!(笑))。

でも近くでない方も、サイトやfacebookを見て、つながってみるといいと思います。とても温かくて、柔らかい感じの方です!

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執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

文章を書いたり、写真を撮ったりしています。

現在は、『凪~遊部香official site~』で主に活動中。

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>> メインサイト「凪」