2022.4.1流れる時間の中での『6steps』(うめ)

「steps」と「stairs」の違いの話をしたが、そのことをもう少し掘り下げたい。
「今なぜ階段なのだろうか」と考えた時にも思ったことだが、現代建築の中では「steps」はなるべく少なくする工夫がなされている。
既存の「steps」も「slope」へと置き換えられる潮流にあある。
実は「steps」は絶滅危惧種なのである。

他方「stairs」はまだどうしても必要で新しい建物の中にも必ず組み込まれている。
しかしそれでも近年の高層の建物になると一般の来客には階段が解放されておらずエレベーターやエスカレーターの利用を誘導されて、おまけにそれらは結構待たされたり遠回りをさせられたりとちょっとした上下移動にかえって不便を感じることも多々ある。

そしてこのような建物に設置されているのが非常階段と呼ばれる階段である。
ちなみに非常階段は英語で「emergency stairs」とか「emergency staircase」であって、やはり「emergency steps」とは言わない。
「emergency steps」と言うと「緊急措置、非常手段」の意味でとられるのではないだろうか。
それから「staircase」は室内の手すり付きの階段というニュアンスの言葉だが、それに対して屋外の手すり付きの階段に対して「stepcase」ということもない。
こんなところからも「steps」と「stairs」の違いは感じ取ることができる。

さて『6steps』では今回の公演に際して一から階段を製作している。
そこには時の流れに逆行するとか時の流れに抗うまでの考えではないだろう。
ただ子どもの頃の階段の記憶と懐旧がモチベーションとなってそれをさせているように思える。

だがこれからも時流は「steps」の意味や存在意義を少しずつ変えていくだろう。
どれほどの未来になるかはわからないがいずれ「階段」のない時代が訪れるかもしれない。
それは私たちが生きている時代かもしれないし、もういなくなった時代かもしれない。
そのような時間の流れの中で『6steps』がレパートリー作品として踊り続けられたなら、それはなかなかおもしろいことではないかと思う。

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