前半のストーリー
巨大地震発生。地下に取り残された女性は、目が見えず、耳も聞こえない。光も音も届かない絶対的迷宮。生還不能まで6時間。(中略)ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。
UNEXT
新開発都市を襲った巨大地震のせいで、
盲ろう者が地下に一人残されてしまう。
無事にシェルターまで誘導するため、
一台のドローンを駆使して救命に臨む。
◆登場人物
高木ハルオ……ドローン開発事業のインストラクター
我聞庸一……ハルオの同僚で先輩
韮沢粟緒……失声症の妹がいる、ハルオの元高校同級生
中川博美……盲ろうを患っている都知事の御令姪
火野誠……消防署に勤める消防士長
『アリアドネの声』
井上真偽(著)
幻冬舎
2023年6月21日発売
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詳しくは——
感情トリガーとあらすじ、場面
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【感情のトリガー↓】0~204P(スマホ)
①セレモニー【ー】
②巨大な地震【ー】
③逆境の救命【察】
【トリガーの内訳】
①セレモニー(都市開発の式典に参加する)
②巨大な地震(盲ろう者が地下に取り残される)
③逆境の救命(一台のドローンで救命活動に臨む)
└合図止まれ【察】(マサカ…)
【刺激された感情の種類:1種】
思考🤔:★
察=ヒントから展開の予測がつく(1)
①セレモニー【ー】
あらすじ——
ドローンビジネス企業が携わる開発都市——
都市機能を地下に移した未来的都市——
『WANOKUNI』で式典が行われ、
インストラクターの高木ハルオも参加する。
本格的に地下の運営が始まるセレモニーで、
知事の姪である盲ろうの中川博美が挨拶する。
ドローンショーを無事に終えたハルオは、
会場に来ていた元高校の同級生と再会する。
②巨大な地震【ー】
あらすじ——
ハルオが元同級生の韮沢粟緒と別れ、
仕事仲間のいるブースに戻ったころ、
想定外の巨大な地震が発生し、
地下の崩落や火災で街が大混乱に陥る。
再びハルオの下に韮沢が現れ、
失声症を患う彼女の妹を一緒に捜索する。
妹はすぐに見つかり、一安心するも、
ハルオは消防士長に呼ばれ、
地下に取り残された救助者の捜索を頼まれる。
ハルオは、最新型の救助用ドローンを操作し、
地下五層にいる盲ろうの博美を捜索する。
③逆境の救命【察】
あらすじ——
ドローンを地下五層に送ったハルオは、
救助隊を待っていた博美を発見し、
救援物資を届けることに成功する。
が、余震の影響で博美が落水してしまい、
救命活動に危機が生じる。
妙案でなんとか博美を水中から救い、
ドローンによる誘導を続行する。
地下四層の温水エリアまで誘導したところで、
博美から不穏な反応を示される。
カメラでそのエリアの状況を確認してみると、
大量の魚が死体となって浮いていた。
合図止まれ【察】
外のテントから遠隔操作しているハルオは、
ドローンから垂らしたワイヤーを掴ませ、
視聴覚障害者の博美を地下4層へと誘導した。
この階層には入浴場があり、
男湯を通った従業員通路が近道となる。
が、そこで機体を引く反応があった。
「止まれ」の合図である。
岩風呂の中で大量の熱帯魚が浮いていた。
ドローンのカメラで博美の様子を映すと、
手話で何かを伝えている。
それを彼女の介護者である女性に、
通訳してもらう場面である。
クイッ、クイッと、機体が上下に少しぶれた。中川さんがワイヤーを引いているらしい。底面カメラの画面を見ると、何かを伝えようと必死に片手を動かしている。声も発しているようだが、防煙マスク越しで聞こえづらいし、もともと発音も明瞭ではない。
《前掲書、 P.202~203》※スマホで閲覧
俺はドローンを下げ、彼女の手話をメインカメラで捉えた。我聞先輩がバックヤードにいる伝田さんに声を掛け、通訳をお願いする。
「水……痛い……変……」
水が痛い?
「地震で温泉の性質が変わって、酸性度が高まっているとか?」
花村さんがバックヤードから、マイク越しに口を出す。
「ここって天然温泉なんですか?」俺は我聞先輩に訊ねる。
「いや……ホームページの説明では、単に湧水を沸かしたものだと……」
——まさか……
漏電しているのでは?
魚が死んでたってことは、そうだよね?
でも、そこを通る必要があるから、
何とか対策を考えないと。
届けたバックパックに長靴とかないのかな?
感想(前半)
◆目的が明確で分かりやすい!
開発都市の地下層に取り残された——
視聴覚障害を持つ30代の女性を、
無事に地下シェルターまで誘導すること。
地下5層から目的地の地下3層まで、
救助用ドローンを使って導いていくのです
最下層から浸水が始まっており、
地上は大きな地震のせいで火災が発生中。
果たして、ドローンで誘導しているハルオは、
制限時間内に救命することができるのか?
そこが見どころです。
どんな困難が待ち受けており、
それをどう乗り越えていくのか?
救う数は、たった一人ですが、
相手は、視えない、聴こえない、話せない——
絶望的に近い状況です。
浸水までのタイムリミットもありますし、
ゆっくり考える暇もありません。
こりゃ、最後まで読みたくなっちゃいますよ。
後半の感情トリガー
【感情のトリガー↓】204~417P(スマホ)
①焦りと疑念【悲・訝・忌・悲】
②電波の途絶【悲・悩】
③最後の希望【訝・驚】
【トリガーの内訳】
①焦りと疑念(救命活動が更に難しくなっていく)
├崩落で墜落【悲】(ナンテコッタ!)
├障害に疑惑【訝】(ハ?)
├合図止まれ【忌】(ムリムリ…)
└火災が延焼【悲】(ナンテコッタ!)
②電波の途絶(思わぬ邪魔で事態が最悪になる)
├機体ロスト【悲】(ナンテコッタ!)
└救助の優先【悩】(ドウスレバ…)
③最後の希望(解決法を新たな視点から発見する)
├単純な方法【訝】(ハ?)
└疑念の正体【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
【刺激された感情の種類:5種】
驚度😳:★
驚=予想外の出来事(1)
思考🤔:★★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(2)
不幸😫:★★★
悲=悪くなった状況を認知する(3)
恐怖😣:★★
忌=生理的な回避反応(1)
悩=すぐに選択できない(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
①東京で不安定の母親と二人暮らしの次男——
高木ハルオは、兄の位牌に手を合わせてから、
ドローンのコンサルトに出勤する
②ハルオは、仕事先で元高校の同級生——
韮沢粟緒と再会し、9歳の妹がいることを知る
③ハルオ達コンサルメンバーは、
地下に設けた開発都市の運営記念に参加し、
物資運搬技術に採用された——
空中ドローンショーを会場でお披露目する
a【物語が始まる起点・問題】
☆開発都市の近くで起きた巨大地震で、
地下層に盲ろうの女性が一人取り残される
☆ハルオが、救助隊の消防士長から呼ばれ、
要救助者の救命協力を要請される
B【発生した問題への対処】
①ハルオが、最新型救助用ドローンを操作し、
火災で人が入れない地下層を探索する
②地下層で発見した要救助者に、
非常用の救援物資を届ける
③最下層から浸水が進んでいるため、
要救助者を時間内にシェルターまで誘導する
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
①入浴場のある地下四層で漏電が起き、
感電で目的地に向かうことが困難になる
②地下の崩落でドローンの機体が損傷し、
前と底面カメラの視界を失ってしまう
③要救助者の盲ろうに詐称疑惑があると、
暴露系ユーチューバーが明かす
④盲ろうである要救助者の行動に、
違和感を覚えることが続く
⑤不意な操作ミスでドローンが使えなくなり、
要救助者の救命活動が停止する
C【人物の葛藤・苦しみ】
①作戦に必要なドローンの数をやっと集めて、
救命活動を再開しようとしていたなか、
失声症の妹と逸れた韮沢がやってきて、
ハルオは、ドローンを要求されてしまう
②電波途絶打開作戦を実行するも、
上手くいかずにタイムリミットが迫る
③要救助者が語っていた過去の動画を見て、
ハルオが作戦を練り直す
c【問題解決に向かう最後の決意】
★電波の問題と韮沢の問題を解決する——
一つの妙案をハルオが思いつく
D【問題解決への行動】
○電波が届くギリギリまでハルオが進み、
かろうじてまだ使えるドローンを操作し、
要救助者をシェルターまで誘導する
読了した感想
◆要救助者のミステリと回収が素晴らしい
いやぁ、盲ろうの人を助ける譚だけに、
盲点を衝かれてしまいました。
要救助者の違和感ある行動の数々。
それが明らかになった瞬間は、
まさに驚歎でしたね。
先入観を抱かせる仕掛けが完璧。
救助者の視点もあったほうが、
不安と恐怖が伝わりやすいのでは?——
なんて思ってしまいましたが、
それでは最後の衝撃は得られなかったでしょう。
◆成功のヒントがここにあり
救助用ドローンを操縦するハルオは、ずっと、
死に別れた兄の言葉に囚われておりました。
『無理だと思ったら、そこが限界』
だから、彼は何が何でも無理とは言いません。
しかし、どんなに足掻いても、
進めないときは誰にもあります。
ハルオもそんな状況に陥りました。
そして、盲ろうの女性の言葉を聴きました。
『無理だと思ったら、すぐに潔く諦めます。
もっと自分にできそうなことを見つけて、
そちらに目標を切り替えます』
その言葉が、ハルオのしがらみを解き放ち、
新たな解決策へと導いたのです。
一度、壁にぶち当たったら、まず俯瞰してみる。
今の自分なら、どの道を渡れそうか。
その方向で目的地に辿り着けそうか。
壊れない壁を叩き続けてもダメということ。
啓蒙的なメッセージを感じましたね。
『アリアドネの声』
井上真偽(著)
幻冬舎
2023年6月21日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!
※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2024年2月時点のものです。
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