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ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長 山平哲也氏

ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長 山平哲也氏(前編):IoTは「異業種格闘技」だ

日本のIoTを変える99人【File.014】

2016.06.30

Updated by 特集:日本のIoTを変える99人 on June 30, 2016, 10:19 am JST

2016年4月、ユニアデックス株式会社は、「IoT分野でビジネス拡大を狙う企業をつなぐハブとなる」ことを目指し、「IoTエコシステムラボ」を立ち上げた。その背景と目指すものについて、同社のIoT関連の取り組みを推進するキーパーソンとなる山平哲也氏に聞いた。

ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長 山平哲也氏(前編)

山平 哲也(やまひら・てつや)氏
ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長。企業向けシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、インターネット普及に伴いIPネットワーキング技術などを担当。2001年に米国シリコンバレーにおける拠点立ち上げ。2007年からICTソリューションのマーケティング企画部門を経て、現在、IoTを中心としたエコシステム構築とビジネス創造を推進している。

ICTと無関係なお客様とつながるきっかけに

弊社はシステムインテグレーターとして「ワンストップ・マルチベンダー」をキーワードに、さまざまなベンダーと一緒にお客様にサービスを提供してきました。その中で、2、3年前から、「ICTが活用できていないお客様」がたくさんあってまだ十分にリーチできていないということに気付き、そこにどうして入っていくか、ということが課題になっていたのです。-

一例をあげると、「ノンPC」の世界にどう取り組むか、という話です。今まで我々が見てきたお客様は、業務システムをメインフレームからクライアント・サーバー型システムに置き換えて、端末はPCで、というお客様でした。

ところが、2010年から出てきたiPadが実際に使われる場面は、今までPCが使われていた業務ではなく、いまだにネットやITにつながらない「紙」で行われていた業務でした。つまり、今まで見えていなかった市場がたくさんあって、そこにリーチするための鍵の一つがタブレットなどのノンPCデバイスだということに気付いたのです。でもこれは、単体ではシステムインテグレーターにとって利益が出ない商材。そこで収益を上げるには、従来とは違う収益構造を考えなくてはいけません。

ではどうすればいいのか、当初は自社だけでいろいろと考えていたのですが、これはどうも自分たちだけではどうしようもないということが見えてきました。そこにIoTというキーワードが出てきたことで、今までICTとは無関係だった方々とも関係を持ってビジネス構造を変えていく、あるいは創り出すきっかけになるのではないか、というのが、IoTエコシステムラボ設立のベースにあります。

IoTエコシステムラボの価値は共創パートナーと一緒に作る

ラボに来ていただくことを想定しているお客様は、「IoTで何かやらないといけない、でもどうしていいかわからない」で悩んでいる方。社長や役員から「うちもIoTで何かやりたいから考えなさい」と言われた、でも情報システム部に頼ろうとしても相談に乗ってもらえない、困った、という人が結構いるんですね。「いろいろな話を聞いてもさっぱり分からない、デモが見れたらイメージが湧くんだけど」という方に、ラボでデモを見せて、考えていただくきっかけを作る、というのがまずあります。

デモを見せる側の立場で参加する共創パートナーは、自分たちの持つハードウェアやソフトウェアを使って、IoTサービスを提供する立場ですが、こちらはこちらで、自社のサービスをIoT化して何と組み合わせることでお客様にとってどんな価値を生むことができるのかがつかみ切れていないのが現状です。だったら一緒に新しい価値を生むソリューションを作って、お客様と一緒に考えることで新しいビジネスを作ろうという考え方です。

「ラボを使って何かを見せたい」「ラボにあるものを使って何かを作りたい」「ラボにあるもので何ができるのかを見たい」という人がそれぞれの立場で集まる場です。どんな使われ方になるのか、正直まだ模索中のところもありますが、活動を進めながら形にしていければと考えています。

参加するパートナーにこれだけはやって欲しくないと、お願いしていることがあります。それは「機能や性能の説明だけをする」ことですね。スペックではなく、現場の方々に響くような使い方や、利用シーンを見せることで、お客様もイメージが湧くし、私達にも新たな発見があると感じています。

「一緒に作る関係」が大切なのはシステムインテグレーションと同じ

ラボは現在仮オープン中で、6月中に本設備に移転後に什器なども入れて、7月18日にグランドオープンを予定しています。お客様にはまずはデモを見ていただきます。デモシナリオは少しずつ増えていて、今2ケタちょっとになりました。

▼デモシナリオの例
デモシナリオの例

デモを見ていただいた後は、では具体的に何をやりたいかというお客様個別のシナリオを作り、具体化するためのお手伝いをさせていただきます。具体的には、IoT活用支援ワークショップ、PoC検証支援サービス、IoTスタートキットの3つを用意していまして、これは有償です。無償で相談にのるわけではなくお金をいただくことで、お客様の本気度が分かります。

今のところ反響が多いのは製造業や物流業のお客様で、やはり「IoTで何かを、と言われてもクラウドとか分からない、そもそもシステムってどうやって作るのかよく分からない」という方々です。シナリオ例として災害の予兆検知なども挙げていたので、自治体の方からももう少し引合があるかなと思ったのですが、今のところ基本は民間の方です。

「エコシステムラボ」と名付けたのは、サービスやシステムを提供する人とされる人という関係ではなく、「一緒に作る場」にしよう、という意味があります。システムインテグレーションサービスでも、うまくいく時というのはインテグレーターとお客様が一緒に作ることができたときで、「発注者」「受注者」という関係で一線をひいてしまうといいものができません。エコシステムラボは、お客様と私達が一緒に作る場というだけなく、パートナーとも一緒に付加価値を創り出す場にしていきたいと思っています。

異業種とぶつかり合うことで新しい発見ができる場に

ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長 山平哲也氏(前編)

ここまで言っておきながら、「エコシステムを作って共創を」って、少し言葉が綺麗すぎると私自身は思っています。正しくは、「異業種格闘技の場」にならなくてはいけないのではないか。異業種交流なんて生ぬるいことではだめで、汗まみれでぶつかり合うことでしかいいものはできないのでは、と感じています。

IoTにどのようなインパクトがあるかと紐解いていくと、これまでまったく接点がなかった異業種が競合になるということです。たとえばGEが金融業を全部売り払ってPredictでクラウドをやります、っていうのは異業種参入ですよ。東レは繊維にIoTで付加価値をつけて医療・ヘルスケアシステムの分野に入ってきています。これはどこの分野でも起こりえるし、逆にそうしなくては生き残れません。

そうは言われてもほとんどの企業は、同業種同士での横のつながりはあっても、全く畑違いの市場にはそもそも出て行くためのつてがありません。そのための橋渡しも、エコシステムラボで提供できるようになればと思っています。今まで出会ったことがない業界の人を集めて、ぶつかりあうことで、思いもよらないような使い方や新しい市場を発見できる、そういう場になればいいですね。もちろんそれはお客様だけではなく、パートナー企業が集まる場で新しいつながりができることもあってもいいと思います。

後編に続く

構成:板垣朝子

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