【本】矢樹純『或る集落の●』

独立した短編を集めたものかと思って読み進めると、途中から同じ世界観を共有した連作短編であることがわかってくる。
ホラーにありがちな「こういうもの」と読者に忖度させるようなあやふやな共通理解で終わるものでなく、しっかりとした設定があるみたいだ。
矢樹氏は感性でなくロジック主体の物語作りをする。
設定らしきものが見えてくるとSF好きの自分としては、ラストではこの『或る集落の●』世界の根幹に関わる何かを知ることができるのか!? と必要のない期待をしてしまう。

個人的には「がんべの兄弟」の不思議な趣きにハマる。
フランス人作家マルセル・エイメ氏(とくに彼の短編『七里の靴』)を髣髴とさせる。
物語の中で提示された危機を、リアリティラインの変化によって一瞬にして解決/終結させるような、言ってみれば身も蓋もない物語が僕好み。