■ヨーロッパにも、「なまはげ」はいた!
てつさらです。
シャルル・フレジェという人が、ヨーロッパの19か国を取材して撮り集めた写真集『WILDER MANN (ワイルドマン)』がすごいです。
奇怪な格好をした、人とも獣ともつかぬ生き物たちが、荒涼とした大地に屹立しています。そのインパクトと言ったら…!
これはまさしく、ヨーロッパのなまはげですね!
Amazonの紹介文には、次のように書かれています。
“野生”をまとい、生命を祝う男たち
ヨーロッパ諸国で何世紀も昔から伝わる祭り。そこに登場する獣人たち。
彼らは、さまざまな衣装を身にまとい、生命の輪廻や季節のめぐりを祝う。
動物の毛皮や植物でできた装束、鈴や骨で飾られた姿。
それらの驚くべき多様性と奇怪な美しさをおさめた写真集。
欧州19か国を取材したプロジェクト。約160点を収録。
■これは悪魔か?
ヨーロッパの荒野で、いきなりこういう半獣人と出会ったら、卒倒しちゃうでしょうね。
そして、こう思うに違いありません。
「悪魔だ!」
このように、頭に角が生えていたり、動物のようなかっこうをしている者を、私たちはすぐに「悪魔」のようだと形容してしまいます。
そして、私たちが悪魔と聞いてすぐに思い浮かべるイメージの多くは、キリスト教によってもたらされたものです。
キリスト教が普及する前、ヨーロッパには、(この写真集にみられるような)自然(獣)への信仰を示す土着的な宗教がたくさんあったはずです。
それは、獣たちが持つ荒々しいエネルギーを我が物にしたいという憧れのようなものだったと思います。
しかし、西方キリスト教会は、キリスト教伝来前に信仰されたそのような他宗教(異教)の神々を、「悪魔」と称して、異教信仰の根絶を図りました。
悪魔というイメージを強烈に打ち出すことで、古来の宗教に否定的な印象を与えようとしたのです。土着の宗教の持つ獣的な要素は、まさに悪魔的なものとして排斥されたのです。
つまり、悪魔の姿は、キリスト教による土着の異教への抑圧の象徴ともいえると思います。
■自然との別の関わり方
この写真集の獣人たちの姿を見て思うのは、キリスト教のような、獣的な要素を排除し、人間の精神的な面だけをどんどんと純粋化していくような精神のあり方とは異なる、もっと自然に根差した精神のあり方の可能性です。
キリスト教を背景とした西洋文明は、自然を、そこから私たちが役立つものを取り出すための対象、材料としてしか見ていない面があります。
そうではなく、もっと大地に根差した、自然を尊重する文明の可能性があるのではないか…。
この写真集の獣人たちの異形の佇まいは、そのような従来とは別の文明のあり方の可能性を垣間見せてくれているように思えます。
以上、てつさらが、さらっと書きました。