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【書評】日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方

『会社に電話がない。顧客に会わない。上司は怒らない。10連休が年4回。全社員にiPhoneを支給。それでも、売上が毎年140~200%で成長。そして、社員満足度日本一。』そんな会社についての本が『日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方』です。

本書は綿密なDataに基づいた学術的な本という訳ではなく、著者が自ら会社を経営する中で学んだことを公開している、そんな等身大の書籍です。そういう点では『働き方革命/著 駒崎弘樹』や『デッドライン仕事術/著 吉越浩一郎』に似た印象を受けました。

私は過労死者が出たり、20代社員の辞職が相次ぐ組織に所属していた事があるので、書籍の中で紹介されている社員の満足度を高めるための色々な試みを実に面白く読めました。社員33名の小さな企業でも、ここまで面白いことが出来るのだなと感心しました。もしくは小さな企業であるからこそ、ここまで新しい試みが出来たのかもしれません。

最初に社員満足が高いとどうなるか、考えてみましょう。

社員満足度が高いと…

  • 社内の雰囲気が明るい。
  • 離職率が低下して、社員の定着率が上がる。新規採用にかける費用を抑制できる。
  • 与えられた仕事を意欲的にこなす。
  • 様々な改善をする。
  • 新しいServiceのための提案をドンドンと出してくる。

他にも様々な事が考えられますが、こういう組織で働くというのは楽しそうですね。

そして、私が本書に注目するきっかけとなったのは『長期休暇制度』です。

長期休暇制度

有給休暇を計画的に付与して10日間の長期休暇を1年間に4回確保する。長期休暇中の営業日はローテーションを組んでおく。長期休暇とは別に1年間に4日まで自由に使える有給休暇が取れる。

EC Studioの年間の休日は140日以上で、大企業並み。現在は有給休暇を100%消化し、長期休暇を取っても問題ない体制にある。

これまでの日本では非常識だとみなされる制度を導入したのは何故か、またどういった考えが背景にあって導入したのか。本書を読めばこの制度の背景にある考え方がよく分かります。

BusinessはGameみたいなものです。最小の労力・最少の費用で最大の利益を目指すGameです。不必要な労力や不合理な判断を可能な限り無くしていきましょう。そしてせっかくだから、なるべく楽して、また楽しみながら最大の利益を目指しましょう。本書にはその知恵が書かれています。

また中小企業の経営者だけでなく、大企業の人達にも本書は読んでもらいたいです。「私が所属している企業は大企業だから無理だ」と最初から諦めてしまうのではなく、まずは自分が、そして自分の所属する課で実践する人が少しでもいてほしいです。こういう社員満足度が高い組織が日本にもっと増えたら、元気な日本人もまた増えることでしょう。しかめっ面をして働くのではなく社員がイキイキと働ける、そんな職場が増えて欲しいです。

 

以下、本書を読んでいて途中で取ったメモ

書評にうまく組み入れられなかったので、それぞれの内容を個別に読んでください。

『社員満足が顧客満足を生む』この事は当たり前かなと思えますが、ちゃんと出来ている企業はほとんど全くないのでは?例えば長時間残業やサービス残業を強要したりすると社員の満足度は極端に低下します。この状態で無理やりに顧客満足を追求しようとしても、それは無理でしょう。社員満足がないと、見ていないところで手を抜きます。言われたことしかやりません。満足度が低いから、社員同士で助けあう、教えあうという意識も希薄です。

『顧客に合わない・電話を受けない』古い考えの営業マンだとこの考えを全く受けつけないでしょう。「客先を訪問しないと何も出来ない」そういう考え方に縛られています。でも、Internetをうまく使えば10年前には出来なかったことが今では出来るようになっていることもあります。実際、今なら客先訪問や電話応対をしなくても営業出来ます。この事を分かっている年配世代の人達は少なそうだな。

『まず、「しないこと」を決める』何をなすべきかと同時に何をしないかが重要だと考えています。(31頁)ここから会社でやらない14ヶ条を紹介していてそれが面白い。

やらない14ヶ条『7 社員をクビにしない』一旦雇ったら本人が辞めたいというまでクビにしない。部署異動で解決できない場合は、その本人の最も優れている強みが発揮できる部署を新設する。社員の強みを引き出すための面白い試み。

やらない14ヶ条『8 売上目標に固執しない』数字に固執すると社員が無理をし、顧客に迷惑をかける可能性があります。月末、期末に目標到達のために客先に迷惑をかけまくっている営業の人ってけっこういるのではないでしょうか。

『お客様は神様ではない』中には常識を逸脱した要求をされる方もいらっしゃる。その要求に対して上司から無理な対応を強いられることで社員は疲弊していきます。全ての客先要望に答えないために、『断るための基準』を設けている会社ってどれくらいあるのだろうか。

『給料は高く、勤務時間は短く』勤務時間が短く給料が高い状態を作り出すためには高い生産性を実現しなければならない。社員のために労働時間を短くしよう(≒人件費を抑えよう)という発想がないとこの発想は出てこないな。サービス残業を強要する組織は論外。

社員に長時間労働を強いて、またサービス残業を強要する組織で社員を生産性を追求している企業ってあるのかな?無さそう…。そういう意識がないから長時間労働&サービス残業が存在するのだろう。

『社員のやりたいことをさせる』やる気が下がる原因は「会社からやらされている感が強い」仕事である。「給料は慰謝料」というような事が公言されている組織ではみなしかめっ面で仕事しています。

ここで重要なのは、やりたいことが出来ている仕事の割合であったり、上司が自分の意見を聞いてくれたり、採用してもらえるかもしれないという可能性を感じることができる組織の状態を作り出しておくこと。こういう環境があるとやる気が出るよな。その反対の環境だと…

『決して怒らない』怒られてやる気が出るなんて、ウソです。そんな人は見たことがない(笑)部下に成果が出ないからといって怒ったとしても、怒られないために頑張るようなやる気は長続きしません。上司が部下を見極め、足りない部分を補って、上司と部下が共に成果を出していくという姿勢が重要。

たしかに怒られるよりも、褒められる方がやる気が出る。でも、この事を分かっていない人は未だに多い。特に年配の人達に。あと、怒るだけで改善のための行動が何もない上司は、上司の役割を果たしていない。

『ランチトーク制度』社長、経営幹部、上司など自分より役職が上の者であれば、誰にでも申込むことが出来る。毎月一回は申し込むこと。業務が終わった後の飲み会に連れていかれるのに比べてずっと良い。もっと昼食の時間を有効に使いたい。

『強制退勤制度』21時以降の残業は一切禁止し、事務所の照明を消す。21時以降なんてどうせダラダラとしか仕事をしないんだから、早く社員を帰らせた方が良い。そして、できれば19時強制退勤とかにしてほしい。

『ノートーク制度』定められた時間は自分の仕事に集中すること。緊急時を除いて、電話、Mail、話すを禁止。会話、電話、Mailによって仕事に集中できないことはよくあるので良い制度。「がんばるタイム」です。

『長期休暇制度』有給休暇を計画的に付与して10日間の長期休暇を1年間に4回確保する。この制度を実現するために、「仕事の見える化」と「社員同士の協力体制」が必要。社員個人に仕事を押し付ける組織では実現不可。

社員が有給が取れない組織、また「俺がいないと業務が回らない」というような発言がされる組織は、他の人達からの支援が得られない組織であるだけ。病欠を除いて有給が全く取れない会社とか、駄目な組織だなと思う。

「売上を粗利で計上する」「税金をたくさん払う」「キャッシュフローを最重要視する」とか会計上の試みについても色々と書かれています。個人的には好きな分野だけど、blog上だとあまり需要がなさそうなので紹介は割愛。

『生産性を上げて費用を下げる』決まった時間の』中で利益を上げようとすると、1人当たりの生産性を高めるしかないのです。当たり前のようだけど、これを分かっていない人って本当に多い。「仕事は目で盗め」とか言っている人とかね…。

仕事で必要な知識・やり方を共有するのは生産性を向上させるために欠かせないにも関わらずに、なぜこれが理解されないのだろうか。「俺が10年かけて学んだことは、お前も10年かけて学べ」とかなんでそういう発言が横行するのだろうかといつも疑問に思っている。

『商談・面接・会議で動画を共有する』商談や会議には発言するのみを参加させ、発言しない人向けには、その商談や会議は動画を撮って後で共有する。また、会議の参加人数の上限は4人とする。会議で何にも言わない人って多いよね…。

特に面白いなと思ったのが「面接をビデオで撮影すること」。これをすることによって「同じ質問に同じ回答を繰り返す、面接時間の浪費を無くせる」というものが面白かった。せっかく色々な技術があるのだから使わない手はない。

あと客先との商談をビデオ撮影しても、「より良い提案をするために社内でこの打ち合わせを共有させて下さい」と言って断られたことがない。というのが凄いなと思った。商談のビデオがあれば、PDCAを行いやすいし、また教育資料としても有効に使える。

他にも書籍の中でVideoを使って、Youtube経由で集客する、ノウハウを共有するといったVideoを有効活用する方法が面白かった。Digital Video Cameraも安くなっているし、Videoは有効活用すれば色々な事が出来そう。

『社員はKeyboardを一定以上の速さで打てなければならない』この基準は意外に斬新だなと思った。一日の大半をPCでの業務を行う人達でも、打鍵速度がとても遅い人がいたりする。だから生産性向上のために、全社員に一定以上の打鍵速度を身につけさせるのはとても有効な試みだと思う。この制度を取り入れる際の難点は打鍵速度が遅いのはたいていは中高年社員であるから、彼らの自尊心を大いに傷つける可能性があるということ。古い組織であるほど抵抗が凄そう。

『社内資料としてパワーポイントを使うことを禁止』理由は作成に時間がかかるから。代わりにMindmapを利用。ほとんど読まれない社内資料作りをやたらと熱心にしている(させられている)人っているよね…。

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日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方

会社に電話がない 顧客に会わない 10連休が年4回 という会社がある。 いいなあ。 なんという非常識な。 本当にこんな会社でちゃんと仕事やってるの? できるんです。本…

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