DAHON Mu SLX トーフ交換です。

先週末はおかげさまで大変忙しく、私一人だけの当店はいつも以上にごちゃごちゃとしておりました。非常にありがたい限りです。

さて、先日の作業です。上の画像をご覧になって「あ~あれね」とご理解くださった方はかなりのDAHON通。こちらの部品はDAHONのステム折りたたみ部分に組み付けられております、ステム固定ブロックです。通称の「トーフ」のほうが知れ渡っているかもしれません。

お客さまがご愛用のMu SLX、ステムの固定レバーを締めこんでしまうと、レバーを開放した際にロックが解除されない、という事例でした。うまくロックを解除して内部を確認してみますと、トーフがひび割れてしまっておりましたので、在庫の部品でさっと交換、固定レバーを調整して終了です。

トップ画像をご覧いただけますと、内部には鉄芯と、それを取り囲むようにジュラコン系の白い樹脂で覆われているのがお分かりいただけると思います。アルミ製の固定レバーと常に強い力で押し付けられている部分ですので、すべりの良いジュラコンを用い、強度確保のために鉄芯が入っております。しかしながら、経年劣化等で今回のようにひび割れてしまうこともございます。

ここで大切なのは、ひび割れた場合には、整備の行き届いた状態と比較して、固定レバーの操作感や、実際のステム固定具合は変化してしまう、というところです。今回は固定されたまま戻らなくなってしまいましたが、固定が緩くなってしまうこともございます。かと言って、真鍮製などの社外品へ交換してしまいますと、クラッシャブルゾーンが無くなってしまい、アルミ製の固定レバーの摩耗が進行してしまう可能性が高くなります。あるいは、ステム折りたたみ軸部への負担が大きくなり、アルミ製のステムそのものの摩耗が進行してしまう可能性もあるでしょう。

現時点では、ジュラコン+鉄芯のトーフは部品供給がなされておりますが、固定レバー単体は供給がなされておりませんので、万が一の摩耗や破損などの際には、ステム一式での部品手配となってしまいます。どちらが安価かは一目瞭然です。

自転車店も林立し、インターネット上での情報も錯綜している現在ですが、どの情報が正しいのか?というのはそれぞれの価値観、あるいは視点によるところが大きいと思います。レーシングカーが最高、という方もいれば、トラックが最高、という方もおられます。今回の事例におきましては、”真鍮製のトーフ”を考案した方は、「トーフの耐久性を向上させたい!」という視点からであると思われますので、それはそれで素晴らしいことだと思います。あるいは、ほとんど折りたたむことがないご用途でしたら、ひょっとすると長期的な視点で見れば耐久性が高いのかもしれません。しかしながら、少なくとも、長きにわたって生産されてきた、”ジュラコン+鉄芯のトーフ”の美点、「必要な時には適切に破損してくれる、交換が安価で容易な部品」という性能を阻害してしまうかも?という視点ではないと思われます。

このように、各方面からの視点を考慮しますと、一見しただけでは改良、と思しき変更作業も、長い目で見れば改悪になってしまう可能性もあるかと思っておりますゆえ、当店におきましては、自転車の寿命を著しく縮めてしまう作業は、原則として行いません。そして、定期的な交換を要する部分というのは、それなりに交換頻度が重要となる部位である、と思っております。今回のトーフや、Bromptonのメインローラーヒンジクランプなどはその最たるものです。

当店におきましては、常時在庫をしておりますので、即時対応可能です。