投稿者 undecuplet | 2010/03/09

独特の孤高感のピアノソロ~田中信正(tanaka nobumasa):mummy’s dance

tanakanobumasa春のはずなのに、東京は冷たい雨が降っています。雪のような容赦ない冷たさの雨にすべてが覆われているようなこんな閉ざされた感覚の日には、日常と非日常の微妙な間合いをもつ音楽世界に身をおくのもおすすめです。独特のピアノとの対話を聴かせてくれる田中信正さんのソロ・ピアノアルバム「mummy’s dance」です。

田中信正:mummy’s dance

こちらで試聴できます

1.Night&Day
2. Four
3. Autumn Leaves
4. Mummy’s Dance
5. 雨
6. Scarlet Cord
7. Sunny
8. Billie’s Bounce
9. Requiem

切れ味の鋭敏なピアノというべきでしょうか。ストロークが鋭く、空間を切り裂くようなタッチ。それでいてあたたかさのある独特のピアノです。
ライブハウスなどでの彼の演奏をみると、鬼気迫るその姿に、彼のまわりだけ独特の空気が流れるような感じに、思わずひきよせられます。そんな日本では珍しい「孤高のピアニスト」感・・・一度聴くと忘れられない、彼の独特の魅力となっています。

田中さんは、1968年横浜生まれ。国立音楽大学作曲科中退。1993年 荒井皆子(VOICE)とのデュオで、「横浜JAZZプロムナード」 第1回コンペティションで「グランプリ」と「ベストプレイヤー賞」を受賞されています。

今回のソロピアノアルバムでも、ビル・エバンスの生前未発表だったソロアルバムのごとく、プレイヤー自らとピアノとの対話がそのまま音になってでてきたような、田中さんならではの世界観、空気感が伝わってきます。それは、きっと彼がピアノを好きで好きでたまらないからこそできるものなのでしょうが、そのあたりの研ぎ澄まされたふしぎな恋心のようなものが、ジャズ・スタンダード曲のもつ愛くるしさに包まれてやさしく切なく伝わってくるのです。

「ナイト・アンド・デイ」や「枯葉」などのジャズ・スタンダードとオリジナル曲が半々くらいの構成です。しかし、なんといっても、おすすめは、Bobby Hebbの「サニー」です。ピアノとひとつになった田中信正さんが存分に楽しめます。そしてオリジナルの「requiem」。哀しく切なく、素敵な一品です。ぜひいちど聴いてみてください。


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