母の日に、ひと言の感謝を

 高校生以下の子どもがいる家庭に、親をどのように呼んでいるのかアンケートをしました(ベネッセ、2009年)。結果は4割が「パパ・ママ」、5割が「お父さん・お母さん」人前では「お父さん・お母さん」と6割が呼ぶそうで、TPOに応じて使い分けられているようです。

 「お母さん」という呼び名は明治30年頃、文部省の小学校国語教科書に登場した新語です。江戸時代以前の武家の妻(奥方)は、寝殿造りの家の「キタノカタ(北の方角)」に住んでいたので、その方角を除いて「オカタサマ(御方様)」と呼ばれていました。夫が呼ぶ場合には「オ」を除いて「カタサマ」と呼ぶようになり、子どもが「カカサマ」、「カアチャン」、「オッカア」と呼ぶようになったようです。士族言葉ではそれが「おかあさま」、庶民言葉では「おっかさん」だったのを、身分制度がなくなった明治になって「おかあさん」として普及を図ったのです。

 それにしても人の呼び名は、様々なれど、「お母さん」という呼び名にはいつも暖かさや優しさ、ぬくもりを感じます。「おかぁさん、なぁに、おかぁさんっていい匂い」という歌が愛されるのは、すべてを包み込む安心感があふれているからでしょう。

 一方で、どんなに豊かに愛情を注いでも、子どもたちはやがては自分の手から離れていきます。手許に残るものなどほとんどありません。「ありがとう」のことばすら耳にすること多くはないかもしれません。そうであってもなくても、与えることが喜び、それがお母さんです。「ありがとう」の反対ことばは「あたりまえ」。節目を覚えて母の日に「ありがとう」を伝えましょう。母をして自分を育んでくださった天の父に感謝をしましょう。たったひと言のことばであっても伝えられる思いがあるのですから。