ブログ「言葉美術館」

■■『希望』■■

2016/06/30

W一通のメールをいただいた。

私と同じくらいの年齢の女性の方からだった。


彼女は書店で偶然に一冊の本を手にとった。文庫本だった。

美神(ミューズ)の恋』というタイトルの「ミューズ」という言葉、それから私の名に、懐かしさを覚えた。そして購入し、私のサイトを見つけて、メールを送った。


貴女のエッセイが好きで、それを読むためだけに講談社刊『FRaU(フラウ)』を3年間定期購読していたのです、もうずいぶん昔のことですけれど、と書いて。

はい。受け取った私は胸をうたれ、さいきんやたらと涙もろいので、抵抗せずにそのまま落涙。


当時は月2回の発行だったから、文章を書きはじめたばかりの私には、かなりきつい連載だった。

それでも好評をいただき、1年目は「君の名は女神(ミューズ)」というタイトルで、画家と、彼をインスパイアしたミューズのことを書いた。これがまとめられたのが『彼女はなぜ愛され、描かれたのか』で、それが文庫化されたのが『美神(ミューズ)の恋』。


2年目は「彼女だけの名画」というタイトルで、私がヨーロッパの美術館で感動した絵をとりあげ、紀行の要素もすこしだけ織り交ぜながら書いた。


3年目は「男の美術館~描かれざる自画像」というタイトルで、画家版男論的なエッセイとなった。これはいまでは貴重本(と私は言ってまわっている)&内緒の本『素顔の絵画』にまとめた。

もう、かれこれ10数年前になるけれど、3年間も読み続けてくださった方がいらしただなんて、嬉しすぎる。

*絵はワッツの『希望』。複製が我が家のリビングに飾られている。

私の人生を支えてくれる大切な1枚。

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