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空耳妄言⑯-「学会とは何か?」「アメリカはどうなる?」-空耳のように聞流して良いが、誰かが囁いたほうがいいような話がある

*学会とは何か?大学教授の役割とは何か?
一体全体、世の中に学会と名のつくものはいくつあるのだろうか?正統な学術学会から路上観察学会、漂着物学会のような珍奇な数名からなるもの、創価学会のように数百万を擁するものまで、人が二人以上集まれば学会になるほどであるから、浜の砂ほどの数があるに違いあるまい。
医学会だけでも数百はあるであろう。小生の所属する小さな臨床医学会でも、直接関連するものだけで5つや10はある。
学会とは何のためにあるのか?
第一には研究の成果を発表し、それについて意見交換をし、更なる進歩に繋げるためである。同時にこれは自分が一番先だというプライオリティをとるためでもある。もっとも最近は論文にしないとプライオリティはとれないとされているが。(それをいいことに人の発表を掠めて横取りするものがいる。そして、その手が世間的には出世していることが多い。)
第二は、研究者たちの親睦団体としてある。第3には、大学や研究所の教授たちの権力闘争の場でもある。大した利権はないが、理事長、会長と言う名誉欲が争点になるのだ。(うまくすれば勲章が貰える)そして多少の役得があるのだろう。第4には、会員の利権擁護団体としてギルドのような役割をもつ。医学会では多くは専門医、00医と言う資格を認定することで、多くも00士、00シュバリエ、00ソムリエというような資格を与え、その利権を守ることで、認定利権が生じる。
 さてそんな学会(特に医学会)の中心的な行事が学術集会というやつで、全国から、時には海外からも同業の士が数百~数千人集まり論文を発表したり聞いたりして勉強するのである。会員は諸々の資格獲得、保持のためには参加しなければ点数がもらえないので嫌でも参加する。

さてそんな学術集会のメーンテーマが開催半年前くらいまでには会員に告示され、参加を呼びかけられるのであるが、それを見れば最近の同業の学問の動向が読めるのである。
小生の所属する00外科学会の次回の年次集会のシンポジウムの筆頭テーマは「次なる00外科のbreakthroughは何か」である。奇妙なテーマである。これは、「自分たちは、今何をbreakthroughすればよいか分からないから話し合いましょう」という意味なのか?
学会の会長というのは、殆どが大学という研究機関の00部門の長である教授である。トップが、今breakthroughすべきものが何かわからずに何を指導しようとするのであろうか?研究の先端に入れば(いなくとも先端知識があれば)、いやでも課題は見えるものだ。
いや、これは教授たちのシンポではなく一般会員のためのものだよ、というかもしれないが、真剣に先端を走る研究者がわざわざ超えるべき課題(それが独創的であればあるほど)を他人に教えるはずもないし、人から教わろうともしないだろう。又そんな地平にいない会員にとってこのようなシンポジウムは必要ないであろう。

やはり、これは学問の先端を経験したことがない者たちのノー天気な発想というしかないだろう。言いかえれば、こんなテーマが堂々とまかり通る学会とは何かということである。
学会とはbreakthroughすべき課題をテーマにする処ではなく、(共通の暗黙の了解である)breakthroughするべく課題のbreakthrough する方法の先端を競い合うところであるべきであろう。

こんな使命感の欠けた教授達がリードする緊張感のない学会からどんな進歩が期待できるというのか。

*歴史学者の視点―トランプ政権を予測する
BSフジの「プライムニュース」が面白くなってきた。
同じように、ひとつのテーマを決めて、一家言を持つゲストを招いて話を聞き、問題を深めていくというスタイルの報道番組はBS読売の「深層ニュース」があるが、いかんせんMCの鋭さに差がありプライムニュースの方が断然面白く、ますます差が開いてきたように思う。

先日も、トランプ新大統領の今後のアメリカを予測する、というようなテーマで、歴史学者の熊本県立大学学長の五百旗頭真氏と同じく慶応大学法学部教授の細谷雄一氏が出ていたが、歴史学者の歴史分析的な視点は、政治家や評論家とは違い新鮮で面白かった。両氏とも個性的で、おそらく何かと批判する人もいるであろうが、両者を選んだプライムニュースの識見を感じさせるものであった。
曰く、アメリカの歴代大統領は、「秩序」と「正義」と「利益・力」の3つ核の間を振り子のように行き来しながらもバランスをとって世界の指導者として役割を果たしてきたが、トランプは世界の正義にも秩序にも全く関心がなく、あるのはアメリカの利益だけであり、損か得かでしか判断しないアメリカ史上初の大統領であり、過去例が無いだけに今後のアメリカの出方の予測は難しいという。英国も、オランダもフランスもドイツもイタリアも極右と言われるエゴイスチックな同じような指導者が生まれる気配があり、もしそうなったら、収拾がつかなくなると予測する。クラスの不良少年達がつるんで、力を持ってきた時、注意すべき先生が不良だったらどうしようもないだろうというのが、その例えであった。
歴史学者的な見方と言うのは、目からうろこの所があり、つまらぬ権力党的(田原総一郎的)な政治評論家たちの愚にもつかない解説よりももっと社会に評価されていいのではないかと、痛切に思った。
期を同じくして、地政学的な視点を売り物にして世界情勢を語る寺島実郎のBSTBSの「月刊寺島文庫」が、「アメリカの本質、日米関係の宿命」を放送した。そこではペリー提督とマッカーサー元帥を例にあげ、アメリカがアメリカンシーザーとして日本を統治しようとしながらも、「抑圧と寛容」の精神で、「自由と正義」という価値を与えようとしたが、トランプでその伝統も終わるかもしれないという。
トランプ就任後1週間が経ち、就任前の世界の期待も虚しく、彼の政策の判断基準が「アメリカの利益が第一になるかどうか」であることがはっきりしてきた。
世界は自国第一、自分第一の我欲の時代になって行くのだろうか。
それを誰よりも鋭く感じとって、我先にトランプにすり寄ったのがソフトバンクの孫正義であり、中国のアリババのジャック・マーであったのは象徴的であった。
また村上世彰みたいな(東大出て官僚になると国費で留学し、帰国後すぐに辞めてオリックスの宮内義彦をスポンサーにして投資ファウンドを作り、インサイダー取引に問われると「金儲けは悪いことですか」とせせら笑った。)のが、デカい顔して跋扈する嫌な時代が来るのであろうか。

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