Portugal007-Porto

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One night luxury  / 宮殿ホテル、欲情、そういう清濁

ポサーダというのはブラジルでは民宿のことを意味していたはずだが、ポルトガルでは宮殿をホテルに改造した高級宿泊施設のことらしい。一泊くらいは、と奮発して私たち4人はポサーダにふた部屋をとった。宮殿の客間だとかサロンだとかさまざまな部屋を抜けた向こうに併設の旧製糖工場があって、私たちはそこに泊まる。

ポルトの街に観光に行くという友人たちを送り出して私はひとり、ポサーダにとどまった。ポルトワインを頼み、つまみと一緒にテラスでちびちびやりながら、異様に甘いワインに何度も咳き込んだ。なんだこのおんな子供用の酒は。まるで風邪シロップだ。かくいう私もおんな子供だけども。

テラスからみえる川面は昼下がりのきつい日差しを浴びてキラキラ銀色に輝き、日差しは部屋の中までも届いた。私はリバービューの部屋を開け放ってポルトガルのギター弾きの奏でる音をゆるゆると部屋の中に投げ放ち、もの悲しいギターのしらべが部屋を満たすのをゆっくりみていた。日が暮れゆき、夕暮れどき対岸にその赤い身をしずめるのをゆっくりみていた。空がまず赤に、ついで紫に、藍にと色を変えていくのをゆっくりみていた。ため息は窓枠を離れて夕風に乗る。川面にうつるすべてのものが、しずかだった。

ああ!
汚いところに行きたい、臭いものが食べたい、場末のおやじたちと話をしたい。ふと、つむじに錐を突き立てられたような痛烈な気持ちで私は思った。いつものように、名前も知らないバーに入ってちょっとどきどきしながら隣のおやじが頼んでいるつまみを頼んで、足元に散らばる鶏の骨や果物のたねや乾きもののかけらや米粒を足でよけて、紫煙もくもく、ビールをあおって、うわーこの魚くっせー、けどうっまー、などと言ってカウンターのおばさんとしゃべりたい。そんな気持ちが溢れてきて、それはもう性欲にも似た、気持ち悪いほどリアルで攻撃的な欲情なのであった。

2014.12.28