[歌劇]フィデリオ(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)

フィデリオ(表)

フィデリオ(裏)

収録曲 [歌劇]フィデリオ全2幕 LD2枚組(収録時間:125分)  [ドイツ語/日本語字幕]
BMGヴィクター(-円) ベルリン・ドイツオペラ管弦楽団・合唱団(指揮:アルトゥール・ローター) 1963年上演

ドン・フェルナンド(大臣):ウィリアム・ドゥーリー(バリトン)
ドン・ピツァロ(国事犯監獄の典獄):ヴァルター・ヴェリー(バリトン)
フロレスタン(囚人):ジェームス・キング(テノール)
レオノーレ(フロレスタンの妻、男装して「フィデリオ」と名乗る)
:クリスタ・ルートヴィヒ(メッゾ・ソプラノ)
ロッコ(牢番の長):ヨーゼフ・グラインドル(バス)
マルツェリーナ(ロッコの娘):リザ・オットー(ソプラノ)
ヤキーノ(門番):マーティン・ヴァンタン(テノール) 他

ベートーヴェンによる唯一のオペラである「フィデリオ」を収録したこの映像は、1963年4月、当時のドイツ・オペラ劇場(シャルロッテンブルク歌劇場)で収録されたものです。序曲を演奏しているところでは、指揮のアルトゥール・ローターの後方に観客が映っているので、実際の公演の模様を映しているようですが、それ以降の部分には観客は映らず拍手やブラボーもありません。どうやら、序曲の部分とそれ以降の部分とを別々に撮影し、一つの映像作品に仕上げたもののようです。モノクロ映像です。

舞台は18世紀。スペインのセヴィリア近郊にある国事犯監獄。独裁政治下において自由のために戦う勇敢な闘志フロレスタンは、政敵のドン・ピツァロの策略にはまり地下牢に閉じ込められている。夫(フロレスタン)を心配する妻のレオノーレは、夫を救い出すべく男装して「フィデリオ」と名乗り、牢番ロッコの助手として働くが、ややこしいことにロッコの娘マルツェリーナがフィデリオに恋心をいだいてしまう。一方、門番のヤキーノはマルツェリーナに求婚しているにもかかわらず返事が来ない。ヤキーノはフィデリオに嫉妬心をいだいてしまう。

第一幕

国事犯監獄の中庭。門番のヤキーノがマルツェリーナに求愛の返事を求めるが、マルツェリーナは自分はフィデリオを愛していると冷たくあしらう。そこに現れたのが牢番の長ロッコ。彼も娘マルツェリーナとフィデリオとの結婚を望んでいる。鍛冶屋に修理してもらった金具(囚人の足かせなど)を背負って、疲れた様子のフィデリオが帰ってくる。マルツェリーナとの結婚の話を聞かされ当惑する。ロッコが歌う「金がなければ幸せになれぬ。みじめな人生が続き、苦労の種は尽きない・・・。」は、娘の幸せを願う父親の愛情が溢れています。

国事犯が繋がれている牢屋に一緒に行かせて欲しいというフィデリオに、困惑しつつも「娘の婿の願いなら・・・」と受け入れるロッコ。そこに兵士を引き連れて現れたのがドン・ピツァロ。ピツァロは「フロレスタンを収監していることが大臣の耳に入った。大臣が直々にこの監獄を視察に来ることとなった。それまでにフロレスタンを始末しなければならない」とロッコに言う。「何という機会。俺は恨みを晴らし、貴様は運命に甘んじる。あいつの心をかき乱してやる。無常の喜び。大いなる幸い・・・。」と歌うピツァロは、まさに悪の権化の迫力があります。しかし、ロッコは殺人と知って尻込みするので、殺害はピツァロ自身が行うことにし、ロッコには誰も知らない場所に墓穴を掘るよう言いつける。その企みを知ったフィデリオは「憐みを祈る人の心をついて出る呼びかけも、お前の凶暴な心を動かしはしないのか・・・。」と嘆く。

ピツァロが去ったあと、フィデリオは罪の軽い罪人だけでも中庭に出して太陽を拝ませてやれないか・・・と、ロッコに提案し受け入れられる。地下からゾロゾロ出て来た囚人たちは「おお何という喜び!自由な空気の中で呼吸できる。ここにだけ。ここにだけ人生がある・・・。」と合唱する。しかし、囚人たちの中に、フィデリオの夫であるフロレスタンの姿はなかった。ロッコが戻り「ピツァロ様から、フィデリオを地下牢に連れて行くことも許可していただけた。」と聞かされたフィデリオだが、夫フロレスタンが数週間にわたって食事を減らされ衰弱し、近々、秘密裏に殺害される予定であるとことも聞かされ、激しく動揺する。マルツェリーナとヤキーノが血相を変えて飛んできた。許可もなく罪人たちを中庭に出したことを知ったピツァロが激怒しているというのだ。やがて現れたピツァロは「ふてぶてしい奴め。図々しい真似をして。小物風情が囚人に自由を与えるのか・・・。」とロッコに怒りをぶつける。ロッコは「他の囚人に自由を与え、その間に例の男を葬ろうと考えたのです。」と苦しい言い訳をする。

第二幕

暗い地下牢。フロレスタンは、深く暗い地下牢に鎖で繋がれている。「神よここはなんて暗い。ぞっとするような静けさだ。身の周りは全て荒涼。何一つ生命はない。おお厳しい試練よ!」と歌うフロレスタン。墓穴を掘るためにやってきたロッコとフィデリオ。フィデリオはフロレスタンの顔を確認しようとするが暗くて判別がつかない。人の気配を感じて水を欲しがるフロレスタンに水筒の水を与えるフィデリオ。そっと隠し持ってきたパンも与える。この囚人が自分の夫である確証はないが、「私が必ず救い出してあげる。」と囁きかけるフィデリオ。やがて現れたドン・ピツァロ。大臣が来る前にフロレスタンを殺害しなければならないと焦っている。ナイフを抜いたその時「下がれ!」と二人の間に割って入ったフィデリオ。「刺せ。まずこの胸を。お前は必ず死ぬ。その殺意に満ちた心の故に。まず妻を殺せ。」と、用意したピストルを構えるフィデリオ。その時、地上でラッパの音が聞こえてきた。大臣が到着したのだ。

国事犯監獄の中庭。囚人や民衆が傅(かしず)いている。「国王陛下の思召しにより、私は君たちの下に遣わされた。奴隷のように跪(ひざまず)くのはやめよ。暴君の残酷さを持つつもりはない。」と民衆に語りかける大臣のフェルナンド。ロッコが進み出てピツァロの悪行を暴き、フロレスタンを救ってほしいと訴える。大臣は死んでいるとされた英雄のフロレスタンが生きていることに驚き、ピツァロを逮捕する。解放されたフロレスタンは「神よあなたのお裁きこそ正義なるもの。神は試練をお与えになり、われらを見捨て給うことはない。」と歌い上げる。民衆が「夫を救った妻を讃えることは、どんなに歌い上げても足りないものだ。」と合唱する中、幕が下りる。

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