[歌劇]カルメン(ジョルジュ・ビゼー)

カルメン(表)

カルメン(裏)

収録曲 [歌劇]カルメン全4幕 LD2枚組(収録時間:172分)  [フランス語/日本語字幕]  1987年上演
メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団・バレエ団(指揮:ジェイムズ・レヴァイン)

カルメン(ジプシーの女):アグネス・ヴァルツァ(メッゾ・ソプラノ)
ドン・ホセ(騎兵隊伍長):ホセ・カレーラス(テノール)
ミカエラ(ドン・ホセの許嫁):レオーナ・ミッチェル(ソプラノ)
エスカミーリョ(闘牛士):サミュエル・ラミー(バリトン)
フラスキータ(ジプシーの女):マイラ・メリット(ソプラノ)
メルセデス(ジプシーの女):ダイアン・ケスリング(メッゾ・ソプラノ)
レメンダード(密輸業者):アンソニー・ラチューラ(テノール)
リーリャス・パスティア(酒場の主人):ニコ・カステル(バリトン)
山の案内人:シャルル・ドュバル(バリトン)  他

このLDを見ていると、1992年のバルセロナオリンピックを思い出します。スペインのカタルーニャでの開会式。開会式の後半は何人かのオペラ歌手が会場に現れ彩を添えました。最初に登場したのがアグネス・ヴァルツァでした。そのとき私は思いました。なぜ地元の歌手でなく、ギリシャ人のアグネス・ヴァルツァが最初に登場したのか。それはこの地方を背景としたオペラ「カルメン」において、当時カルメン役で第一人者となっていたのが彼女であったからです。となると、その相方である騎兵隊の伍長ドン・ホセも登場するはず。その適任者としては、このアンダルシア出身で三大テノールの一人ホセ・カレーラス以外に考えられません。次々と会場に姿を現すオペラ歌手たち。カレーラスはどこにいるのか。私はTV画面に見入りました。しかし、カレーラスは最後まで姿を現すことはありませんでした。後で知ったことですが、カレーラス氏は当時既に現役を退いており、この開会式の総合監督という地位にあって、最初から出る予定はなかったとのことでした。

序曲はあまりにも有名です。スペインの闘牛場にいるようなドラマチックな入りだし。劇中に出てくる「闘牛士の歌」と騎兵隊の整列や行進の様子などを連想させる曲が続きます。終盤は深い苦悩を思わせる旋律で終わり、このオペラの悲劇的な幕切れを暗示しています。このLDでは、ジェイムズ・レヴァインの指揮により演奏されるわけですが、迫力満点の演奏になっています。

第一幕

カルメンが働いているセビリアのタバコ工場前の広場。タバコ工場の休憩の鐘がなると、カルメン目当ての伊達男たちが集まってきます。そこにカルメンが華々しく登場し「ハバネラ(恋は気ままな鳥、誰も飼い馴らせはしない)」を歌います。歌い終わったカルメンは、持っていたバラを騎兵隊伍長のドン・ホセに投げ誘惑します。やがて工場内が騒がしくなります。女工同士の喧嘩が始まりました。喧嘩の発端はカルメン。他の女工を傷つけたと逮捕されました。牢獄に連行する役目を負ったのはドン・ホセ。「私を逃がしてくれたら、リーリャス・パスティアの酒場で待っていてあげる」と囁きかけるカルメンの誘惑に負け、縄をほどきます(この後、ドン・ホセはカルメンを逃した罪を問われ、営倉に入れられてしまいます)。

第二幕

舞台はリーリャス・パスティアの酒場。カルメンとその仲間たちがたむろしている。ここでカルメンが「ジプシーの歌」を披露し、場は一気に盛り上がります(このオペラでのバレエはここに挿入されています)。仲間からドン・ホセが釈放されたとの報せがカルメンにもたらされます。そこに大勢を従えて店に入って来たのが人気闘牛士のエスカミーリョ。差し出された杯を飲みほし、「闘牛士の歌」を披露します。その颯爽たる姿にカルメンは心をときめかしますが、エスカミーリョの誘惑を振り切り、自分のために犠牲になったドン・ホセを待ちます。エスカミーリョが人々と共に店を出た後、やつれた姿のドン・ホセが入ってきます。カルメンはカスタネットをたたきながら歌いドン・ホセをいたわります。やがて帰営ラッパの音が聞こえるとドン・ホセは帰ろうとしますが、それを見たカルメンは激怒します。こんなに私がもてなしているというのに・・・と。騎兵隊をとるかカルメンをとるか、決めかねているドン・ホセに、カルメンは「脱走して山で一緒に暮らそう」と話しかけます。そうこうしているうちに騎兵隊の隊長(カルメンに熱をあげている)が店に現れ、カルメンを巡ってドン・ホセと争いになりますが、店に戻ってきたカルメンの仲間たちに隊長は取り押さえられます。現場に居合わせたドン・ホセは帰営を諦め、カルメンの仲間たちに加わります。

第三幕

セビリア近郊シャラ・マドムの山中をジプシーたちが荷物(密輸品)を背負って歩いています。ここで演奏されるフルートのしっとりした間奏曲はなかなかです。途中休憩の場で歌われる三重唱も有名です。カルメンはメッゾ・ソプラノ。仲間の女二人はソプラノ。歌詞は税官吏をだます手口を自慢し合う女たちの歌で「税官吏なら任せてよ。男は誰も同じ。女たらしで厚かましくて」と歌い上げます。そこにエスカミーリョが現れ、盗賊一党をセビリヤの闘牛場に招待すると告げます。もちろん目当てはカルメンです。カルメンを愛していると公然と話すエスカミーリョにカルメンは心惹かれます。ドン・ホセは強い嫉妬を感じ、エスカミーリョを敵視します。一方、何も決められないドン・ホセに対するカルメンの愛は冷め、冷たい視線を投げつけます。そこに、隠れていたミカエラが発見され、一党の前に引き出されます。彼女はドン・ホセを連れ戻そうと山中に入り、隠れていたのです。彼女はドン・ホセの母が危篤であることを知らせ、何としてもドン・ホセを故郷に連れ戻そうとします。それを聞き、冷笑を浮かべながら「行きなさい」とドン・ホセを突き放すカルメン。

第四幕

幕前の間奏曲はいかにも闘牛の開始を想起させます。場面はセビリアの闘牛場前。観衆に迎えられエスカミーリョが登場します。その横にカルメンが腕を組んで従っています。エスカミーリョはここでも、衆人の前でカルメンとの愛を歌い上げます。「ドン・ホセが来ている。気を付けろ。」との仲間の忠告にも動揺しないカルメン。「話をつけてやる」と吐き捨てるように言います。そこにドン・ホセが現れます。「一緒に逃げよう」と誘うドン・ホセ。「私を殺しに来たのならさっさと殺しな。生きようが死のうがイヤなものはイヤだよ」と突き放すカルメン。やがて闘牛場からエスカミーリョを称える歌が聞こえてきます。闘牛場に入ろうとするカルメン。それを阻止しようと立ちはだかるドン・ホセ。とうとう彼は隠し持っていたナイフでカルメンを刺してしまいます。ドン・ホセの腕の中で息絶えるカルメン。「俺を捕らえてくれ」と慟哭するドン・ホセ。ここで静かに緞帳が降ります。(幕)

奔放なジプシー女と生真面目な騎兵隊伍長との悲恋を描いたストーリーですが、このオペラに対して難しい印象を持たなくて済むのは、ひとえにビゼーの音楽に負うもの大と思います。序曲やアリアもすばらしいですが、幕間に演奏される間奏曲も一曲一曲がとても丁寧で素晴らしいです。

カルメンCD

収録曲 [歌劇]カルメン全4幕 CD3枚組(収録時間:162分)  [フランス語]  1958年上演
フランス国立放送管弦楽団・合唱団(指揮:サー・トーマス・ビーチャム)

カルメン(ジプシーの女):ヴィクトリア・デ・ロス・アンジェルス(メッゾ・ソプラノ)   他

1958年というと私が3歳の頃ということになります。指揮者のサー・トーマス・ビーチャムの名前は知っていますが、出演者の名前は聞いたことのない人たちばかりです。もっとも、輸入盤なので日本語解説書がなく、歌手でかろうじて(あてずっぽうで)名前が読めるのは、カルメン役のヴィクトリア・デ・ロス・アンジェルスくらいです。

解説書の写真で見るヴィクトリアは、丸顔の大きな目が魅惑的な歌手で、トロリとした甘ったるい声をしており、色気で男をたらしこむタイプのカルメンです。一方、上のLDでカルメンを演じているアグネス・ヴァルツァは、そういった意味では筋肉質のカルメン。どちらが女として恐いかはわかりません。

この3枚のCDの表面には、ヴィクターレコードおなじみのスピーカーを覗き込む犬のデザインがプリントされており、とてもシックなCDに作り上げられています。かなり聴きこまれたのでしょう、3枚目は音がやや割れています。

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