後白河院(ごしらかわいん)

後白河院

◆主な登場人物

後白河院:77代天皇。若い頃から遊び好きの派手な性格。大柄な体格。色白で日頃はにこやかに振る舞っていた。即位後3年にして二条院に譲位し上皇となる。院政の始まり。66歳で他界した。

信西入道(しんぜいにゅうどう):後白河院の反対勢力を保元の乱で一掃し、保元の乱後の混乱を収拾した立役者。傍若無人で敵が多かった。当時力を持ち始めた武士にも睨みをきかせ、公卿朝臣たちからも恐れられた。「平治の変」で追い詰められ自刃した。

中納言殿(ちゅうなごんでん):藤原俊成の娘。第二章の語り手。

入道相国(にゅうどうしょうごく):平清盛のこと。平家の全盛期を築いた。「平氏にあらずんば人にあらず」と豪語した。

吉田経房(よしだつねふさ):「吉記」の著者。吉田光房の息子。第三章の語り手。

藤原兼実(ふじわらのかねざね):「玉葉」の著者。第四章の語り手。後白河院亡き後の内裏を掌握し、源頼朝を征夷大将軍にした立役者。

◆あらすじ

この小説は、29歳で第77代天皇に即位し、その後たった3年で二条院に譲位して上皇となり、66歳で崩御した後白河院にまつわる歴史を、3人の日録の筆者(平信範、中納言殿、吉田経房)から内府(藤原兼実)が聞き取りをするという形で進行します。最後の第四部では兼実自身による後白河院観が披露されます。

源頼朝によって「日本国第一の大天狗」と称された後白河院は院政を敷いたことで有名ですが、なぜ早々と二条院に譲位して院政に移ったのでしょうか。台頭する武士勢力に従うふりをしつつ、したたかに反撃の機会を覗っていた様子がこの作品に描かれています。

◆作品について

この作品は、雑誌「展望」昭和39年10月復刊号から昭和40年11月までに、六回に分けて掲載されました。

この作品について、井上靖は随筆「歴史小説の周囲」で次のように触れています。

「小説の題を「後白河院」とつけたくらいであるから主人公は後白河院であり、優れた政治的人間か、陰険な策謀家か、謎の人物とされているこの武士階級登場時代の天皇を、同じ時代に生きた公卿たちに、彼らが自ら書いた日録を材料にして語らせようというのが、ねらいであった。」と。更に「これほど書きにくくて、筆の進まない仕事をしたことは後にも先にもなかった。」とも打ち明けています。

コメントを残す