◉邸主の妄言 PREVIEW◉
「ク・ビレ邸」を運営するアート・プロジェクト集団「鞦韆舘(しゅうせんかん)」が、2012年12月、もう一つの拠点「藝術中心◉カナリヤ条約」で開催した「幻燈舞台」。約300本のキャンドルを灯したステージで6組7名のダンサーやパフォーマーが、ストイックにかつ過酷なまでに緊迫した作品を上演してくれた。
終演後、これを観劇していた麻屋霞寿(あさやかすみことぶき)氏が「ぜひこの舞台セットでSMショーを開催したい!」と申し出てくれた。同氏は従来のストイックな緊縛にアーティスティックなエンターテインメント要素を加えたショーを得意とし、自身をロープ・アーティストと名乗っている。今回、同氏の呼びかけにより、6組9名の出演者が参集することとなった。
近年、SMショー業界でも小劇場演劇と同様、新しい潮流が台頭してきている。これまで「M女を縄で縛る」という行為が表現の主流だったのに対して、最近では「演劇的ストーリー」や「照明を駆使した演出」、「エンターテインメントにショーアップ」された作品など、多種多彩なSMショーがアンダーグラウンドで繰り広げられている。これらのパフォーマンスは、従来、彼らがホームグラウンドにしていたストリップ小屋の客層にはなかなか受け入れてもらえず、彼らは新たなる発表の場を目指して彷徨うことになった。
そんな折り、若い音響スタッフから「佐藤さんのやってる舞台、銀幕遊學◉レプリカントの世界観に通じているSMショーの人たちがいるんです。ぜひ紹介した!」と提言され、会うことになった。彼らは「チームB」という団体名で活動していて、その舞台作品は極めてパフォーマンス要素が強く、演劇的。しかも舞台照明にブラックライトを使用し、M女を縛ったロープだけが浮かび上がる演出には驚くと共に、退廃的な美学すら感じた。
このような経緯から「藝術中心◉カナリヤ条約」で、水盤舞台を使ったSMショーを行った(大好評の「水盤舞台」第2弾はアングラ!。2012.9)のだが、今回はその第2弾となる。麻屋霞寿氏の要望のもと集まったのは若手の緊縛師だそうで、藍沢庚丞(あいざわこうすけ)氏・月影蒼狼(つきかげせいろう)氏とも私自身、初見になるのでここではあえて紹介は慎みたい。一方、コンテンポラリーダンス界からは、中国舞踊の遠藤智子(えんどうともこ)氏、ショーダンスの飯干未奈(いいぼしみな)氏など。
遠藤氏のダンスについては民族舞踊とコンテンポラリーダンスの身体語彙を往復するのが特長的だ。また飯干氏はショーアップされたダンスはもとより一貫性のある舞台作品も数々と発表しており、その演出手腕は高評されている。
なお、当日は、「ク・ビレ邸」のバー空間が「カナリヤ条約」に臨時移動し、観客を迎えることになるので、お好みのドリンクやフードを片手に多彩なパフォーミング・アーツを気軽に楽しんでいただきたい。
(文責・佐藤香聲)
【日 時】2013年1月13日(日)開場 17:00 開演 17:30
※終演は21:30予定(15分ほど前後する場合があります)
※ドリンク&フード・ブースは23:00まで営業
【料 金】前売:4,000円 当日:4,500円
※前売、当日共1ドリンクつき
【出 演】麻屋 霞寿×二代目志保、藍沢庚丞×さき、月影蒼狼×結夢
遠藤智子(中国民族舞踊)×辻泰匡(ライブ演奏)
飯干未奈(BLUE ROSE Dance Project代表)
(出演順不同)
【会 場】藝術中心◉カナリヤ条約
※会場は「ク・ビレ邸」とは異なりますので、ご注意ください。
【問い合わせ】06-7492-7504(17:00 – 22:00)