「極秘収集」をスクープしたアカデミー賞候補

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06/17/2013 by kaztaira

米国家安全保障局(NSA)のネット情報の極秘収集プログラム「PRISM」。英ガーディアン米ワシントン・ポストの両方の記事に、共同執筆者として署名が掲載されていたのが、ドキュメンタリー作家のローラ・ポイトラスさんだった。こんなこと、めったにない。

Exif_JPEG_PICTUREガーディアンが公開した告発者エドワード・スノーデンさんの12分半のインタビュービデオの撮影者もポイトラスさんだ。

イラク戦争と市民をテーマにした2006年の作品「マイ・カントリー、マイ・カントリー」はアカデミー賞候補になったという。2004年にはエミー賞も受賞しているようだ。

この「マイ・カントリー、マイ・カントリー」を含む三部作の最後に取り上げるのが、この「PRISM」問題を含む、”告発者とリーク”をテーマにした作品だという。

「ペンタゴン・ペーパーズ」の告発者、ダニエル・エルズバーグさんや、グレイトフル・デッドの作詞家で電子フロンティア財団(EFF)の共同創設者、ジョン・ペリー・バーロウさん、俳優のジョン・キューザックさん、人気サイト「ボインボイン」のシェニー・ジョーダンさんらとともに、昨年12月に設立された「報道の自由財団」の理事も務める。

政府に対する調査報道活動を擁護する同財団は、告発サイト「ウィキリークス」や調査報道NPO「センター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)」などの団体を支援している。

そして、ガーディアンで記事を共同執筆したグレン・グリーンウォルドさんも同財団の理事、という関係だ。

そのポイトラスさんのインタビュー記事がニュースサイト「サロン」に掲載されている。元憲法学者、ジャーナリストのグリーンウォルドさんは、昨年までは「サロン」の人気コラムニストだった。

 How we broke the NSA story (Salon)

このインタビューによると、最初にスノーデンさんからの連絡があったのは今年の1月。匿名のメールで安全な暗号化通信をするため、ポイトラスさんの暗号鍵を教えて欲しい、という内容だったという。2度目のメールには、諜報機関についての情報を持っている、時間を無駄にはさせない、と。

ポイトラスさんを選んだのは、米政府に要注意人物と目され、入管で40回以上にわたって拘束を受けているキャリアを承知してのことらしい。ポイトラスさんがNSAの米国内の情報収集活動を告発した元職員にインタビューし、ニューヨーク・タイムズのサイトで2012年8月に公開した短編ドキュメンタリー「ザ・プログラム」も見ていたという。

ポイトラスさんは、スノーデンさんの告発が信用できるかどうかを何人かの専門家に相談。その一人がワシントン・ポストの記事の筆者で、ピュリツァー賞ジャーナリストのバートン・ゲルマンさんだったという。

一方、グリーンウォルドさんは今年2月ごろに、ポイトラスさんとは別に、スノーデンさんから連絡を受けたようだ。その後、ポイトラスさんと行動を共にする。

ところが、ゲルマンさんは、スノーデンさんとのやりとりを説明したワシントン・ポストの記事の中で、スノーデンさんが5月、PRISMに関する41枚のパワーポイントすべてを72時間以内に公表するよう条件をつけてきたため、交渉は決裂。スノーデンさんはその後、ガーディアンのグリーンウォルドさんに接触した、と述べた。

 Code name ‘Verax’: Snowden, in exchanges with Post reporter, made clear he knew risks (Washington Post)

これに対して、グリーンウォルドさんは2月からポイトラスさんとともにスノーデンさんと接触してきたし何の条件も付けられていない、とツイッターで反論するという、妙な成り行きになっている。

 How Glenn Greenwald Began Communicating With NSA Whistleblower Edward Snowden (Huffington Post)

 Barton Gellman, Glenn Greenwald feud over NSA leaker (Politico)

ポイトラスさんから見れば、これは新作ドキュメンタリーの取材の一環であり、一連の報道はその大規模な事前告知の役割も果たしたことになる。

いろんな見方ができる事件ではある。

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