グーグルはパリで負ける

コメントする

12/20/2009 by kaztaira

昨日の教訓。新聞記者なんだから、新聞ぐらいはちゃんと読んでおこう、せめて朝日新聞ぐらいは...。

 朝、近所をジョギングした後に、ツイッターで外電などのニュースをチェックするのが、最近の習慣だ。ネット系のニュースページのほとんどは、記事掲載とともに、ツイッターにも見出しを配信するので、それをまとめて流し読みをしていくと、日本時間の夜の間にどんなことが起きていたのかが、大体わかる。
 昨日の朝は、ニューヨーク・タイムズのこんな記事“Google Loses in French Copyright Case”が目についたので、グーグル関連の記事を書いてきた東京とニューヨークの同僚と、ワシントンからコペンハーゲンに出張中の同僚に、参考までにメールで転送しておいた。
 すると早速、ニューヨークから返信。「経済面に掲載済みでーす」。?
 大急ぎで朝日新聞をめくると、「電子書籍化 禁止命令/グーグル敗訴 仏裁判所」という、パリからの記事がしっかりした扱いで載っていた。日本の朝刊の記事を、ニューヨークから教えられ。
 新聞をちゃんと読んでいないと、ろくな記者にならない、と教わったのは今からはるか20年以上前、1年生記者の時だった...と遠い目をしてみても始まらないが。
 それはそれとして、グーグルである。
 グーグルによる書籍の電子化計画「グーグルブックス」が、著作権者らの承諾なしに進められ、しかもそれをめぐる米国での訴訟の和解案が、世界中の関係者に適用されそうだ、ということで日本でも騒動になったのが今年2月ごろの話だった。
 関心がある方は、下記に再録する記事もあわせて読んでみてもらいたいが、あれこれあって、先月、「グーグル訴訟で新和解案 英米文化圏の作品に限定」となり、とりあえず、日本の著作物はこの訴訟とは関係なくなる方向になった。
 仏の訴訟は06年に提訴されたというから、米での和解騒動とは別に、3年間にわたる法廷闘争が続いていたわけだ。
 グーグルが、欧州で裁判に負けるのは、これが初めてではない。07年2月には、オンラインのニュースの検索サービス「グーグルニュース」をめぐり、著作権侵害を主張する新聞社による訴訟で、ベルギーの裁判所がグーグル敗訴を言い渡している。
 自分たちの「文化の多様性」の側から物事を考える傾向のある欧州と、「テクノロジー原理主義」と言われるグーグル。欧州とは、相性がよくないのかもしれない。
    ◇
 9月に夕刊で掲載した連載記事「ネットはいま かわる:1)電子図書館計画、逆風も」に「グーグルブックス」をめぐる米での議論がまとめてあるので、再録しておく。
 今年3月、一風かわった特許が米国で登録された。迷路のようなパターンを赤外線で投影し、それを赤外線カメラで撮影して分析する。
 投影する先は本。本を開いて置くと、中央の「溝」から左右に広がるページが、どうしてもたわむ。そのたわみ具合を赤外線をつかうこの手法で3次元的にわりだし、文字のゆがみを補正する。
 特許をとったのは、ネット検索の「巨人」グーグル。分厚い本をスキャンしてデジタル化するための技術だ。
 米国では蔵書のデジタル化が花盛りだ。あちこちの大学や図書館で蔵書をデジタル化する「電子図書館」計画が進む。個人蔵書用の本格的スキャナーも販売されている。
 電子図書館構築の先頭を行くグーグルは04年から欧米の図書館などと提携してデジタル書籍検索サービス「グーグルブックス」を提供する。スキャン技術は公開していないが、この特許で文字の読み取り精度は高まりそうだ。
 その計画がいま、強烈な逆風にさらされている。
 米作家協会と米出版協会はグーグルブックスを「著作権侵害」として提訴。両者は一定の著作権料の支払いなどを条件に昨年10月、和解することで合意したものの、絶版書籍のデジタル化などでグーグルに有利とされ、反対の声が噴出している。
 グーグルが世界の電子図書館を「独占」してしまうのでは――。検索サービスで「反グーグル連合」を組んだマイクロソフトとヤフー、書籍検索で競合するアマゾンなどネット業界大手と、同じ危機感を抱く図書館、独自に電子図書館に取り組む非営利団体などは8月26日、和解に異議を唱える「オープンブック同盟」の結成を発表。「グーグル包囲網」を敷いた。
 和解の成立には裁判所の承認が必要で、審理が10月7日にニューヨークの連邦地裁で開かれるが、米メディアによると、米司法省も独占禁止法に関する調査を始めた。
 審理の担当判事は中国系のデニー・チン氏(55)。正義感が強く、6月には巨額詐欺事件を起こした米ナスダック市場の運営会社元会長(71)に「禁固150年」の判決を言い渡したことで知られる。
 この問題に詳しいカリフォルニア大バークリー校のパメラ・サミュエルソン教授(61)は「和解が承認されれば絶版図書がより広く利用可能になる一方、書籍検索が事実上、グーグルの独占状態となり、購読料を不当に引き上げる可能性がある。チン判事は和解が及ぼす影響の大きさを理解しており、慎重に判断するだろう」と指摘する。(ワシントン=勝田敏彦)
     ◇
 国境や文化を越え、現実との境を越えて、ネットは広がり続けている。その象徴がグーグルだ。グーグルがかえた社会の「風景」を見る。
 ◆キーワード
 <「グーグル書籍検索」和解問題> 08年10月に合意した和解案は(1)グーグルは「絶版」と認定した書籍をデジタル化し、利用できる(2)無許可でデジタル化した著作物1点あたり60ドル(約5600円)を著作権者に支払う(3)データ利用収入の63%を著作権者に支払う(4)この収入分配のための第三者機関を設置し、グーグルはその費用3450万ドル(約32億円)を支払う、などが柱。この訴訟は同様の利害関係者にも効力が及ぶ「集団訴訟」で、加えて著作権の国際条約「ベルヌ条約」などにより、和解の影響は世界の200を超える国・地域に広がることになった。

コメントを残す

アーカイブ

ブログ統計情報

  • 1,064,328 ヒット