『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のカウンターで店主が暇そうに本を読んでいる。
「ねぇ、桃源さん。フリマでこんなの見つけたんだけど」
「なんだ? ショボい貯金箱だな」
「そんなこと言わないでよ。昭和っぽくていいじゃん。それに箱にこんなマークがついてるんだよね」
「ん? これは東京プレイシング商会のマークじゃないか」
「でしょ。ピエロのスケーターを出した玩具屋だよね」
「うむ。こういう製品を出してたとは知らなかったな。ということはギミックがあるんだろ?」
「箱絵の横に書いてあるよ」
「なるほど。プレイヤー部分の蓋を開けて、ターンテーブルにコインを置く。正面のボタンを押すとターンテーブルが回って、その勢いでコインが本体に入るわけか」
「アームが動くところが妙に凝ってるね。これっていつ頃の製品なんだろ」
「ステレオがシステムコンポだから1970年代だろうな」
「まだこの頃はmade in japanの刻印だってところが嬉しいよね。いまはどれもmade in Chainaばっかりだもん」
「自分の国で作られたモノっていうのは何となく嬉しいもんだよな」
「それが普通の時代だったよね」
「うむ。なかなか面白い昭和レトログッズだな。じゃ、オレはランチの時間だ。またな」
桃源さんは言うが早いかカウンターに休憩中の札を置いて、ランチへと出かけていった。