職場で事務を担当している佐藤さんが、スキャナーの使い方を聞きにやってきた。
静:「きみ、前も同じこと聞きに来なかったっけ?」
佐:「すみません。だって忘れちゃうんですよ。」
静:「いい? 人間というのは6回聞いて、ようやく6割を理解すると一般に言われています。」
佐:「そうなんですか?」
静:「そうなんです。この前の研修会で講師が言ってたからね。でも、それはウソ!!」
佐:「…は?」
静:「6回もノンキに聞いてる時点でおかしいよ。そう思わない?」
佐:「じゃあ、静 炉巌さんには”仏の顔も三度”はないんですか?」
静:「ないです。」
佐:「2回とか?」
静:「相手によりますね。」
佐:「相手ですか?」
静:「だってさ、例えば耳の弱い人とかには丁寧に10回ぐらい説明したっていいでしょ?」
佐:「はぁ…」
静:「でも、あんまし繰り返されると”いい加減にしろよ”って、ポコンと叩きたくなるよね。」
佐:「じゃあ、ごくフツーの人だったら質問は2度までなんですか? それって厳しくないですか?」
静:「それは厳しい仏さまの場合ね。あんまし気にしないタイプの仏さまだったら何回でも許すんじゃないかなぁ。聞き手がかわいかったら贔屓とかもするだろうしさ。仏さまだって人間なんだし。」
佐:「仏様は仏様です。それになんでいろんな仏さまがいるんですか?」
静:「だって人間は死ぬと仏様になるでしょ? ということは、仏様はそこらへんにたくさんいるわけだよ。」
佐:「仏陀は一人でしょ?」
静:「仏陀だって、元は人間だもん。あの人は悟りを開いて仏に変身したんだからさ。ちなみに変身に失敗したのがお地蔵さまだよ」
佐:「お地蔵さは失敗したわけじゃないです。」
静:「そうなの? 石になっちゃったのに?」
佐:「別に自分から石になったわけじゃないです。」
静:「ふーん。じゃ、自分から石になるのは何だからわかる?」
佐:「無縁仏…じゃないですよね?」
静:「正解は、子泣きジジイ!」
佐:「それ、妖怪だから!!」
静 炉巌(2003/11/02)